変わらない元彼と成長するわたし

 こうして再会を果たしたのですが、彼は、驚くほどまったく変わっていませんでした。相変わらず酒癖は悪く、「みのもんたのような立ち位置の人になりたい」と夢みたいなことばかり言っていました。システムエンジニアをしている彼が、なにをどうやったら、みのもんたの立ち位置に辿り着けるのか。彼が全然変わってないことに対してわたしが感じたのは、好ましい懐かしさではなく、相変わらず「口ばっかりの人」だなという軽蔑の気持ちでした。

 というのも、彼と付き合っていた頃のわたしは、まだ成人したばかりの学生でした。だからこそ、5つ年上の彼は、ものすごく大人で、世間のすべてを知っているかのように見えました。けれども、再会した時に、わたしは当時の彼とほぼ同じ年齢になっていました。もちろん年齢差は縮まることなくそのままスライドするけれど、社会に出ていたわたしは、以前のようには、もう彼のことを仰ぎ見ることは出来なかった。

 だからわたしは、付き合っている当時つねに突きつけられていた「つまらない女、もっと面白く生きろよ」という挑発を、そのまま彼に突き返しました。すると目の前にいたのは、若い女を「自分の思う女になれよ」と誘導したがる、そこらによくいるただのオジサンでした。

 彼とはその後、しばらく友達として付き合うようになりますが、彼にどんなに挑発されても、もう苛立つことはありませんでした。なぜなら彼に承認されなくても、わたしは自分で自分のことを、「面白い女」であると認めることが出来るようになったからです。わたしは、彼に「面白い女」だと認めてもらうことが勝利だと思っていたけれど、それはまったく違っていた。わたしが苛立っていたのは、彼の物差しで測られていることだった。そして、他人の物差しを手放したわたしは、代わりに自己を肯定することを手に入れたのです。

Text/大泉りか

次回は<「特定の彼氏を作らず遊ぶ!」という決意を撤回させた最高に好みの男>です。
「結婚までは特定の彼氏を作らず遊ぼう」と決めた、20代の頃のAMライター大泉りかさん。しかし、理解者を求めるより顔とSEXで男を選ぼう、と早々に決意を撤回して交際を始めるのでした。その選択の結果は…。