わたしを送別会に誘ってくれた女性
先週書いた、ブラック編集プロダクションを辞める直前に、わたしは大きなミスをひとつ犯しました。風俗嬢の身元がバレてしまわないため、目元に黒い「目線」を入れるように指示を受けていた画像を、そのまま入稿してウェブに載せてしまったのです。
当然問題になって、上層部と店側があれこれと揉めたあげく、その風俗店の広告をしばらく無料で掲載するというところに落ち着きました。入社半年という短さで離職し、ただでさえ気まずいのに、そのうえ会社に損害を与えてしまったことで、後味悪くその会社を後にすることになったのでした。
たった半年しか在籍しなかったこともあって、送別会などは開かれませんでしたが、一応最後の日には、同じ部署の男性たちがランチをご馳走してくれました。そしてもう1人、ひとつ下のフロアで働いていた経理の女性が、「個人的に送別会がしたいから、週末、飲みにいかないか」と誘ってくれたのです。同年代ということで、会社でたまに話すことはあっても、外で会ったことはなかったので、驚きもありましたが嬉しくもありました。
その女性は、会社でも目立っているというか浮いているというか、ちょっと目を引く存在でした。中澤裕子似のナチュラルボーンヤンキー顔。ただでさえ派手な顔立ちなのに、ほぼ金髪で、ばっちりと化粧をしていました。しかもなぜか、OLコスプレのようなピチピチのベストにタイトなミニスカートという制服を、おそらく自主的に着ていました。
その上、彼女は会社公認で“ネットアイドル”としても活動していました。主な活動は、毎週水曜日の夜に、カメラの前でライブチャットをすること。今でこそ動画配信なんて誰もが気軽に始められるようになっていますが、当時はまずISDNという速い回線を引くところから始まり、ビデオカメラを用意して、パソコンに専用ソフトを入れて……となかなかハードルが高く、珍しかったのです。だからわたしは、なぜ彼女がそんなことをしているのか、すごく興味がありました。
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