ずいぶん昔に仲良くしていた女友達がいました。彼女は、大学時代ミスコンに出場したこともある美人で、テレビ局に勤めている6歳年上の彼氏がいました。ある時彼女と飲みに行き、お会計も済ませて店を出るというタイミングで、どうやって帰るのかを尋ねたところ、彼女はこう言いました。「彼氏が迎えに来てくれるって」。
テレビ局に務める彼氏の素顔
6歳年上の彼氏の存在は聞いていたものの、わたしはその彼と会ったことがありませんでした。終電まで時間もあったし、一体どんな人と付き合っているんだろうという好奇心も手伝い、店の前で彼氏を待つのに付き合うことになりました。楽しみにしていた10分後。登場した噂の彼は、6歳年上にしては、ずいぶんと落ち着いた雰囲気の持ち主でした…
…いや、ぶっちゃけ言うと、ちょっと老けすぎていた。老け具合だけではなく、ラグビー選手が着るようなボーダー柄のポロシャツをチノパンのウエストにインにするセンスにも違和感を抱いたのですが、彼女にそのモヤッとした感情をシェアするわけにもいかず「迎えに来てくれるなんて優しい彼氏だね~」なんてテンション高く冷やかしの言葉を述べると、さっさとふたりに別れを告げて、なんとなく釈然としない気持ちを抱えたまま、ひとり帰途へとついたのでした。
それからひと月かそこら、経った頃だったでしょうか。再びその女友達と飲みに行く機会がありました。居酒屋のテーブルにつき、オーダーしたドリンクが届いて乾杯を終えた瞬間、彼女はようやく時が来たとばかりに勢いよくこう言いました。
「実は彼氏に嘘をつかれていた」。
どんな嘘かと問いただしてみれば、なんと年を5歳も誤魔化していたという。
なるほど、わたしが感じた違和感は正しかったと納得するとともに、年齢を偽るなんてことをしていた嘘つきの彼氏とは、当然のこともう別れたと思いきや、まだ付き合ったままだと言います。それでいいのかと問いただしてみたものの「だって好きだから」と。ならば仕方ない。所詮は他人事、お好きにどうぞ……とその場は話が終了したのですが、それから半月も経たないうちに、再び会った彼女は、困った顔でこうわたしに告げたのです。
「実はあれから、彼が寝ている間に社員証を見つけてしまって。そうしたら、あの人、実は15歳年上で、しかも仕事も嘘だった。彼、郵便局員だった」
一度目の嘘は大目に見ることが出来ても、二度目の嘘はさすがに無理だろう。今回こそは別れたに違いないという、わたしの予想を大きく裏切り、それでも彼女は彼のことが好きで、「まだ付き合い続けたいと思っている」といいます。
いやいや、いくらなんでも不誠実すぎる。しかも、真実を告白するチャンスを一度は与えられたというのに、さらにそこで嘘を重ね塗る男なのに、許しちゃうの?
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