インドから届いた怪しい錠剤

 では、その効果はどうなのだろうか。それは実際に自分で試してみるに限る。そう思い、さっそくネットの個人輸入サイトで適当に見繕って注文をした。特に潤い不足に悩んでいるわけではないので、カンジタ膣炎の治療薬ではなく、バイアグラ成分と同じほうで二種類1シート4錠で1180円の『ラブグラ』と1シート10錠で2800円の『マレグラ』を頼むことにした。

 さて、しかし頼んで数日、待てど暮らせどまったく届かない。最近のネット通販って普通、3日以内くらいには届くのに……と思い、発送メールを確認したところ、到着まで10日ほどかかるという。「なぜそんなにかかるのだろうか」と疑問に思っていたある日のこと、郵便受けに郵便局からの不在連絡票が入っていた。その発送元を見ると、なんと『インド』となっている。考えてみれば、個人輸入であるから当たり前なのだが、まさかインドから届くとは思わなかった。

 もちろん個人輸入の経験くらいはあるが、英語のサイトで四苦八苦して取り寄せたことばかりで、日本のネットショップとなんら変わりのないサイトだったから、個人輸入での取り寄せになることをすっかりと忘れていた。便利な世の中になったものだ、と思いながら小さな段ボールを開けると、透明なプラスチックケースの中に、衝撃吸収材に包まれた錠剤のシートが2枚。しかし、『マレグラ』のほうは2錠ほど真ん中あたりで真っ二つに割れていた。

 シートと衝撃吸収材を取り出すと、一番底には、二枚の紙。一枚は日本語と英語混じりで書かれた納品書で、もう一枚はヒンディー語と英語混じりで書かれた販売証明書、海外輸出証明書のようなものらしく、薬剤師や責任者らしき女性の顔写真もプリントされていた。そこで急に、医師の処方箋が必要な薬を自分の判断で飲む、ということに不安を覚えた。

【後編に続く】

Text/大泉りか