女が強がる瞬間
ここで言う「女」とは、キーラ・ナイトレイ演じるジョーン・クラークのことです。
アラン・チューリングは同性愛者でしたが、ジョーン・クラークとは婚約をしました。婚約の理由は、時代が故のことでありました。
しかし、アラン・チューリングは同性愛者。あるタイミングで彼はカミングアウトをします。それを受けた瞬間の、彼女のリアクションは非常にリアル。一瞬驚きつつも、彼を受け入れようとするのです。これが見ていて辛いんです。
恋愛において、発した言葉と本心が伴っていないことってありますよね。「大丈夫だよ」と言いながら大丈夫じゃないとか、「仕方ないよ」と言いながら内心傷ついていたりとか。まさにそれです。
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ジョーン・クラークはカミングアウト以外でも、アラン・チューリングを支えようと、動じない姿勢で彼を励まします。これらシーンのキーラ・ナイトレイの熱演は素晴らしいもので、「強い女性を演じていて見事だ」という意見が多いのも事実です。
しかし、それはちょっと違います。
「強い女性として振る舞う弱い女性を演じたキーラ・ナイトレイが見事」なのです。なぜ彼女はそこまでできたのか。それは彼を愛していたからでしょう。優しい嘘です。
「女が強がる瞬間」とは、本音とも建前とも言えますが、そこに愛は確かにありました。
彼女の発した言葉や態度は、ある種、男が理想とするものでもあります。しかし、少し透けて見えるんです。それは彼女の本音ではないことが。これがとても悲しい。
その絶妙な表情を見せたキーラ・ナイトレイの演技が見所なのは言うまでもありません。