その絆は、1本ではなく何本もの糸でできている

福田:明子さんはきっと、一真さんとの関係を“かけがえのないたった一人の相手”ではなくて、「夫」「起業家」「子供たちの父親」「おもしろい大人」というふうに、“たまたまたくさんの役割を担っている人”ととらえているんじゃないかな、と思いました。

家入:たしかに、付き合ってるときは「恋愛感情」や「性欲」くらいでしかつながっていないけど、結婚して夫婦、さらに家族になると、相手との関係のなかで担う役割はどんどん増えていくよね。

福田: それって、相手との“つながりの糸”が増えていくってことだと思うんです。
“1本の糸で強くつながっている”と思うから無理があるのであって、“たくさんの糸でゆるくつながっている”と考えればいい。
たとえそのうちの1本や2本が切れてしまっても、他の糸でまだつながっていられるじゃないですか。

家入:まあ、その糸の多さは、悪く言えば“しがらみ”なんだけどね。

福田:先ほどの二村ヒトシさんをはじめ、今はいろんな人が「依存先を分散させよう」って言ってますよね。
一人に何もかもを求めると、依存心や執着心でおかしな状態になるから、自分の欲望や欲求を何人かに分散させなさい、と。
ただ、結婚してるのに“人を分散”させたら、それは浮気や不倫になってしまう。だから、
同じ人の中で“役割を分散”させようというのが、俺の提案なんです。たくさんの糸で“ゆるくつながる”家入さんちは、そのロールモデルなのかもなって。

家入:ただ、うちは別居して4年かかって、やっとその状況を受け入れられるようになったのね。
最初からそういうものだと思って恋愛や夫婦関係を始めることってできるのかな……?

福田:俺はこれって、「なんとなく“1本の糸”だと思っていたものが、実は“何本もの糸”でできていることを自覚しよう」という話だと思っていて。

家入:ん? どういうこと?

福田:たとえば、「セックスしたい」という漠然とした欲望も、ただ「性欲を満たしたい」だけじゃなくて、「相手を支配したい」「承認されたい」「癒されたい」「コミュニケーションが取りたい」とか、実はたくさんのいろんな欲望でできている。自分にとってセックスの意味がひとつじゃないことに気付ければ、相手を支配したいという性衝動がなくなっても、別の意味でセックスは続けられるわけです。

家入:ああ、そっか。だから恋愛や夫婦関係も、漠然と「この人しかいない」と思って好きになると後でうまくいかなくなるから、自分がなんでその人を必要としているのか、何を期待して好きと感じているのか、ちゃんと分析しておこうってことだよね。

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