子どもの創造力を伸ばすって?お受験ママに思うこと/旦那さまは貴族(山田ルイ53世

 先日、家族で外食をした。
日中、僕は仕事、妻と娘は“ママ友”達の集まり。
それぞれの予定を消化した後、店で合流し、晩飯を共にする・・・そんな段取り。

 近所でも旨いと評判の小料理屋。
所謂、“行きつけ”である。
先に店に着いたのは僕。
思いのほか、仕事が早く終わったせいだが、おかげで、約束の時刻までは、まだ随分とある。
夕刻を少し過ぎた位の、まだ早い時間帯。
店内の客の姿もまばらである。
カウンターには、常連の老人が一人。
後は、掘りごたつ仕様の座敷に、仕切り代わりの簾(すだれ)を挟んで、僕と、一組の家族連れ。
それだけ。
若夫婦と小さな男の子の三人家族。
僕の娘より、少し年長だろうか。
瓶ビールを注文し、“つきだし”をつまみに一人飲んでいても、
「“一発屋”が昼間から酒飲んでるわー・・・やっぱ、暇なのかな―・・・」
そんな好奇の目に晒されることもない。
“行きつけ”万歳である。

 すると、隣の席から声が漏れ聞こえてくる。
“仕切り”と言っても、簾・・・防音効果などない。
いや、そもそも、“あの声”を無効化する素材など、この地球上に存在するのか。
母親の剣幕は凄まじく、声の“風圧”で、簾が捲れ上がり天井に張り付かんばかりである。
とにかく、あり得ないボリューム。
矛先は彼女の息子である。
どうも、“お受験”を控えた身にも拘わらず、テストの出来が悪かったようだ。
断っておくが、別に聞き耳を立てていたわけではない。
おそらく、店中の人間に聞こえている。

 時折、父親が、
「まあまあ、家に帰ってから話そうよ!」
なんとか、執り成そうとするのだが、
「子どもの世話を毎日してるの私なの!こんな時だけ口出ししないで!!」
即座に、やりこめ、沈黙させる。
ザコキャラ、もとい、夫を瞬殺した彼女は、
「もっと“丸”を使って、何か書けるようにしなさい!」
再び息子に向かって説教を再開。
テーブルの上に、テストの答案用紙でも広げているのだろう。
想像するに、そこに描かれているのは、一つの「○」。
その「○」に、自由に描き足して、何かの絵を完成させろということらしい。
「子供の“創造力”を試す」
そんなお題目に基づいた設問。
「丸だと“切り株”だって描けたよね?」
「丸だったら、色々あるでしょ……果物だったら?好きでしょ?ほら!!」
すると男の子が、
「……リンゴ!」
受けて母親、
「そう!……でもリンゴじゃ駄目!!」
何の罠なのか。
「それだと誰でも思い付くでしょ?それじゃ“お試験”は通らない!!」
同じく、
(……リンゴ!)
と心の中で回答していた僕。
「お店からのサービスです!」
大将が、皮肉たっぷりに“リンゴ”を差し出し、この“鬼母”を、ギャフンと言わしてくれまいか。
夢想してみたが、勿論、そんな展開はない。