千の仮面をつけよう
- K
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おっしゃるように、コンプライアンス室やセクハラ相談窓口に相談することで改善することはあります。
ただ会社によるというのも事実で、エクスキューズとして作ってるだけの企業もあって、「セクハラ窓口の人にセクハラされた」みたいなことも実際あるんですよ。
- アル
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地獄や…。
- K
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それでも変わる可能性はあるので、相談してみてください。その際は、必ず記録を残しておくこと。日記でもいいし、同僚や友達へのメールやLINEでもいい。それがいつか自分の身を守るかもしれないので。
あと大切なのは、社内に味方を作ること。上司・先輩・同僚に相談して、その内容も記録に残してください。
- アル
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孤立するのが一番よくないと言いますよね。精神的にも追いつめられるし。
- K
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そうなんです。だから味方を作って、協力を求めてください。
「○○さんが何か言ってきたら、みんなで『やめた方がいいですよ』と言ってください」とか。他の人がいる場で、第三者が「それダメですよ」とか注意するのはすごく効果的です。
- アル
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一対一で「イヤだ」と言っても「またまた~」みたいな。「女のイヤはイヤじゃない」とか思ってるボケナスもいるから。
- K
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そんなボケナスもいるので、味方を作って戦いましょう。それでも改善しなくて困った時は、弁護士に相談してください。
- アル
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法テラス?
- K
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それもアリだし、「労働弁護団」という雇用関係の専門的な弁護士団とかもいます。それで「実は弁護士に相談に行ったんですよ~」と職場で言うとかね。
- アル
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噂好きの職場なら「オイ気をつけないとヤバいぞ!」ってなりますよね。
- K
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そう、やっぱりビビらせないとダメなんですよ。でも多くの女子は苦手なんですよね。「相手をビビらせないように、感じよく振る舞うように」と刷り込まれてるから。
- アル
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とっさにプーチンの顔ができない。
- K
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できない(笑)。そうやって空気を壊さないように、職場で浮かないように、サバイバルとしてニコニコしてたのが、逆手にとられることもあるんですよ。裁判になった時に「彼女も喜んでた」と主張されたり。
- アル
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地獄や…。
- K
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ビビらせるのに慣れてないから難しいけど、そこは女優になって。
- アル
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「あなたは千の仮面を持っている!」
―会場(笑)
- K
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千の仮面をつけて「今日の私はプーチンの役」って練習するとか。プーチンは無理でも、修造や明菜だったらできるとか。
- アル
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:もしくは「ミキプルーンは最高ですよ!」と中井貴一。
- K
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そうそう(笑)。「次こんなこと言われたら、こう返そう」と想定問答を考えて、練習するのがいいと思います。
- アル
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Kさんは企業でセクハラやパワハラの研修とかもされてますよね?
- K
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してます。
- アル
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そういう研修はおっさん相手にするんですか?
- K
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管理職以上のおじさんたちですね。
- アル
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おっさんはちゃんと話を聞くんですか?
- K
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うーん…。文科省の前次官のセクハラがあったじゃないですか?あのあと文科省が幹部を集めて、女性弁護士が研修をしたんだけど、正直「意味あんのかな?」と思ったんですよ。
身もふたもないこと言っちゃうと、何十年もその価値観を身につけてる人は変わんないんじゃないかって
- アル
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数時間の研修で変わるぐらいの人は、もとからセクハラしてないと思う。
- K
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実は「そういう研修は実効性がない」というデータもあって…むしろ「逆効果だ」という研究もあるんです。
- アル
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マジですか!
- K
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海外の研究なんですけど、女性から「これはセクハラです」とか言われるとカチーンときて、かえって反発するみたいな。
- アル
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地獄や…。もう会場全体がアルミンの顔になってる。
- K
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個人的には、子どもの頃から教育していくしかないと思ってます。出来上がった価値観を修正するのはやっぱり難しくて。
あとはそういう価値観の人を人事的に評価しない、重要なポジションに置かない方が大切ですね。「あいつはセクハラだけど仕事はできるから」みたいに。
- アル
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:男社会は「あいつは女好きだから(笑)」で片付けられがちですよね。
- K
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それを「セクハラする人間にはポストを与えない」という価値観に変えていくしかないと思ってます。
- アル
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昔に比べると「セクハラやパワハラする人間を上に置くのはリスクが高い」という認識が広まりつつありますよね。どんどんその方向に進んでほしいです。Kさん、どうもありがとうございました!
―会場、拍手。