天秤にかける妄想こそ、少女マンガの醍醐味!

 考えてみれば、確かにどちらもいい王子様なのです。男らしい王子様といると、いつも以上に女でいられる快感がありますし、女慣れしているチャラ王子は、場数を踏んでいるがゆえに女心をよくわかっているので、一緒にいてラク。

 みなさんだって、一度は考えたことがあるでしょう。恋愛的にテンションが上がるのは、自分を女にしてくれる男だけど、結婚するなら、一緒にいて安らげる相手がいい、みたいなことを……そう、『ピーチガール』のふたりの王子様は、恋愛向きの王子様と結婚向きの王子様であるように、わたしには見えるのです。

 ここで、逆に彼らのデメリットは何なのかを考えてみると、とーじみたい男は、そんなに柔軟性があるわけじゃないので、誤解やすれ違いが起こりやすく、カイリみたいな男は、一生モテまくりなので浮気の心配が絶えない、といったところでしょうか。うう、一長一短。

 わたし個人は恋愛偏差値が低い男に萌える傾向があるので、基本的にとーじ派なのですが、しかし、実際目の前にとーじが現れたとして、38歳の気力と体力で、この口ベタ男子に対応できるかというと、かなり怪しい(途中から喋るのダルくなりそう)。その点、カイリとは茶飲み友達のようにつき合って、さえみたいな女の悪口を言ったりとかして、仲良くやっていけそうな気がします。
いやいや待て、わたしが今20代だったらとーじがくれるときめきを全力でかき集めるかもな……まあ、こんなことを考えても意味はないのです。現実にはとーじもカイリもいないのですから。そもそもわたし、ももじゃないし。

 でも、ひとりに決めきれないほど拮抗した魅力を持つ王子様を天秤にかける妄想は、少女マンガを読む醍醐味。それをたっぷり味わわせてくれるとーじとカイリが、少女マンガ的に見て、実にデキのいい王子様であることは間違いありません。

Text/トミヤマユキコ

次回は <真のいい女とは?人間不信なイケメンは“特技”がある女を好きになる『高台家の人々』>です。
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