少女マンガに登場するステキな王子様に胸をときめかせていたあの頃——いつか自分も恋をしたい。そんな風に思いながら、イイ男とは何か、どんなモテテクが効果的なのか、少女マンガを使ってお勉強していたという人も少なくないハズ。
時は流れ大人になっても、少女マンガによって植え付けられた恋愛観や理想の王子様像は、そう簡単に劣化するものではありません。むしろ王子様の亡霊に取り憑かれて、リアルな恋愛がしょぼく思える人もいたり? この連載では、新旧さまざまなマンガを読みながら、少女マンガにおける王子様像について考えていきます。
第11回:推せない二人の男を王子様と見る女
『あなたのことはそれほど』
4月からTBS系列でドラマ版がスタートし、最新5巻の発売も控えている、いくえみ綾『あなたのことはそれほど』のテーマは、W不倫。
既婚者でありながら好きな人ができてしまった男女と、不幸にもそれを知ってしまったパートナーの心模様がとても丁寧に描かれているのですが、これが思わず「ひー! それ以上はやめてくれ!」と言いたくなるようなヒヤヒヤ&ゾクゾク感でして……怖いけど読むのをやめられません。
物語は、「2番目に好きな人」と結婚し平穏な暮らしを送っていた「美都」が、12歳の頃からずっと好きだった(処女を捧げた相手でもある)憧れの人「光軌」と偶然の再会を果たすところから始まります。
恋愛に関してひどく向こう見ずな美都は、迷うことなく不倫関係に突入していきますが、光軌はやることはやりつつも、どこかマジメなところがあって、あくまで家庭は壊したくないという考え。「……うちの/奥さんのさ/勘の良さが超怖い…」と語り、生まれたばかりの娘を溺愛する彼に、離婚する気などあろうはずもありません。しかし、もう二度と憧れの人を手放したくない美都に引き留められて、ズルズルと続く不倫関係……本当にダメな男です。
本連載のタイトルは「推せる!マンガの王子様」ですが、『あなたのことはそれほど』に登場するのは、まったくもって推せない、推してはいけない王子様。しかし、その「推せなさ」がすごすぎて目が離せないので、今回は番外編的に「推せない!マンガの王子様」として話を進めて参ります。