オシャレで超絶美人な女装男子、蔵子
ファッションの知識など1ミリも持っていないオタク女子たちがファッションブランドを立ち上げるなんて無謀もいいところなのですが、彼女たちには心強い指南役がいます。
それが女装男子の蔵子です。
蔵子の正体は、政治家の父親に持つスーパーお坊ちゃま大学生「鯉渕蔵之介」。
韓流スターを思わせるイケメンでありながら、女装して蔵子になると超絶美人。
父親の跡を継いで政治家になる気はなく、そこら辺のことはクソ真面目な中年童貞のお兄ちゃんに押し付けてしまって、自分はファッションやメイクで女の子を(そして自分自身を)美しく変身させることに無上の喜びを感じています。
蔵子の女装は、オシャレ好きな女子でもなかなか太刀打ちできないのでは? と思わせるほどセンスが良い! 女の子に憧れる男が「うーん、こんなもんかな?」というあやふやなイメージで着飾っている女装とはレベルが違います。
本当は男だとか、そういうことがどうでも良くなるくらい、完璧に似合っているのです。
強さと美しさ、男らしさと女らしさが究極の形で融合している!
蔵子がハイセンスぶりを発揮する一方で、本作に登場する女子たちはオタクでニートで腐女子という設定なので、言うまでもなくオシャレ偏差値は低い、というよりほぼゼロです。
彼女たちは、オシャレに金を遣っているヒマがあるなら、それを趣味につぎ込みたいと考えています。
彼氏なんか要らない。モテなくたって構わない。
ちなみに、天水館の入居資格はただひとつ、「男を必要としない人生」を引き受けられるかどうかです。趣味と共に生きて死ぬ。オシャレとは無縁の世界です。
そう書いてしまうと、蔵子とオタク女子たちは全く別の人種みたいに思えるかも知れませんが、男であることなんか軽く飛び越えて美しく着飾る蔵子と、女であることなんか軽く無視して趣味の世界に没頭するオタク女子たちは、実は結構似ているのではないでしょうか。
たとえそれが女装だろうと、本気で夢中になれるものがある男子は基本的にカッコいいワケですが、蔵子がとりわけカッコよく思えるのは、女装した時の美しさが「強さ」と結びついているから。
女装したとたん「ふにゃん…」となってしまう蔵子ではないのです。
むしろ、着飾るほどにカッコよくなってゆく。
本作の主人公である「月海」は、蔵子のことを「強くて美しい男のお姫様」と表現しますが、蔵子の毅然とした態度は、誰かにかわいいと言われたいとか、認められたいとか、そういう平凡な承認欲求とは別の次元にあります。
強さと美しさ、男らしさと女らしさが究極的な形で融合しているのです。