プラトニックな純度100%の恋愛で、
あなたの「少女性」が呼び覚まされる
強さと弱さが共存するこの王子様を意のままに操るのは至難の業。和希も大変な苦労をしています。14歳の女の子には荷が重すぎる。
近づいたと思ったら離れてゆくタイプの男なので、春山がリアル彼氏だったら死ぬほどめんどくさいワケですが、マンガの中で和希になりきって春山を追いかけていると「純度100%の愛で尽くしてるわたし」に酔いしれることができます。
しかもふたりはキスまでしかしないんです!
本作にもしもセックス描写があったら、和希がうっかり妊娠してヤンママになる未来しか想像できないんですが、ふたりは最後までヤらない。
同棲までしているのに、ヤらないという徹底ぶり。このプラトニック・ラブにはものすごい浄化作用があるように思います。
とくに、長年の恋愛遍歴の中で、交際相手のことをまずスペックで判断してしまうようになった三十路オーバーの読者を「愛こそが全て」という気持ちにさせてくれるのです。
いまのマンガ界には、リアリティ追求型の恋愛マンガたくさんあって、自分とよく似た人に感情移入しながら読むことができるようになっています。
現実的で打算に満ちた恋愛もたくさん描かれています。
しかし、そんな時代に敢えてあり得ないほどピュアな恋愛マンガの古典を読むことで、自分の中に眠っていた少女性が呼び覚まされる。
「死んだと思ってた少女性、生きてた」という驚きと感動。その意味で本作は己のピュアネスを再発見するための装置なのです。