わたしの男友達と恋人候補との境界線は「割り勘か否か」かもしれない

年末に学生時代の友人たちと男女混合で飲んでいた時のことです。そろそろ終電も近いのでぼちぼち解散しようということになり、お会計になった際、当然こちらは割り勘のつもりで「ひとりいくら?」と尋ねたところ、「女子はいいよ」という返事が戻ってきた。かれこれ20年来の付き合いの男友達にご馳走してもらう筋合いはないので、払うといったのだけれども、「いいよ、いいよ」と結局、驕ってもらうことになったのですが、その時に覚えたのは、自分でも意外なことに「面映ゆさ」であった。

嬉しいか嬉しくないかというと…

みな今ほどは財布の中身に余裕のなかった若い頃、彼らとは完全に割り勘で飲むことが当たり前でした。友達なんだから、それが当然だと思っていた。それは飲み会の場だけではなく、サシ飲みでも同じこと。その一方で飲み会や飲み屋などで知り合った男性と、後日ふたりで食事や飲みに行くといったデートめいたシチュエーションの際には奢ってもらうことが主であった。

ってことは、わたしの、男友達と恋人候補もしくはセフレ予備軍との境界線は、割り勘か否かということになるわけで、それゆえに男友達に奢ってもらってしまうと「え! 女扱いなの!?」とドキッとするという発見をしたのですが、その「女扱い」が嬉しいか嬉しくないかというと、嬉しい。お金を使わずに済んで嬉しいとかいうケチくさい話ではなく、異性として見られているのがそこはかとなく嬉しいのです。

ゲイバーで聞いた会計事情

ってなことを考えながら、昨年の11月から縁あって月に二回カウンターに立たせていただいている新宿二丁目のミックスゲイバー『A Day In The Life』でお客様たちに、デートの時は、割り勘かどっちかが奢るのかという話を度々尋ねたところ、「僕は自分がご馳走する」という方が多かった。
タチかネコかどっちが誘ったか年齢差はどれくらいあるか、相手とステディな関係なのか、肉体関係があるか否か初めてのデートなのかのパターンでも変わるので決して一概ではないと、皆さま口を揃えていうものの、なんとなく男女よりも男同士のほうが、立場としてよりフラットな印象にあるし飲み食いする量もわりと近しそうだし割り勘なんではないかと思っていたのはわたしのまったくの見当違いだった。

やはり恋や色を含んだ関係においてはどちらかが負担するというのがデフォルトなのだと納得した一方で、親しい女友達たちに尋ねると「割り勘にする」という女性のほうが多く、中にはホテル代までしっかり半分払う派もいる。デートでは奢ってもらったほうがときめくわたしは、オールドタイプな女であることよ、と思っていたけれど、むしろゲイ寄りのセンスなのだろうか。

Text/大泉りか