オープン・リレーションシップを許せるかは、意外と慣れの問題かも?『私の最高の彼氏とその彼女』

2021年頃の韓国で、「エゴマの葉論争」なるものが流行したことがあるらしい。どういった論争かというと、「自分」と「友達」と「自分の恋人(あるいは配偶者)」の3人で焼肉を食べに行ったとして、友達がエゴマの葉を剥がせなくて困っている場合、自分の恋人が箸を使って手助けするのを許せるか否か、という内容だそうだ。エゴマの葉(大葉みたいなやつですよね?)は、たいていごま油やニンニク醤油に漬けられて重ね合わされた状態で提供されるので、一人だと葉と葉を剥がしにくいときがあるのだとか。これについて、「ぜんぜん気にならない」と許せる派がいる一方で、使用済みの箸同士が接触する──つまり間接キスのような状態が発生することを許せない派もいて、論争は大いな盛り上がりを見せたらしい。

日本でも「どこからが浮気だと思う?」みたいな話は定期的に繰り返されるけど、これらはすべて、恋人や婚姻関係にあるパートナー同士は互いに所有権を持ち、行動を制限してもよいという考えに基づくものだ。

実はこの「エゴマの葉論争」、今回話題にしたいミン・ジヒョンの小説『私の最高の彼氏とその彼女』のあとがきに書いてあったものなんだけど、さてあなたは、恋人や配偶者が友達のエゴマの葉を箸で剥がして手伝ってあげる行為を、許せるだろうか。

恋人がいる男性と恋に落ちて…

ミン・ジヒョンの『私の最高の彼氏とその彼女』は、一言でいうと「オープン・リレーションシップ」についての小説である。私にとっては「オープン・リレーションシップ」よりも「ポリアモリー」という言葉のほうが馴染みがあるのだけど、ようは、パートナーを1人に限定しない恋愛スタイルである。

あらすじを話そう。主人公のミレは34歳の女性で、元彼のスホと別れたばかり。そんなとき、職場でシウォンというさわやかな笑顔の男性と出会い、恋に落ちる。シウォンもミレに好感を抱いているようなので、彼がミレの新しい独占的恋人になるのかと思いきや、シウォンにはすでにソリという恋人がいた。そしてミレは、シウォンとソリから、3人で「オープン・リレーションシップ」の関係を築かないかと提案されるのだ。記念日がバッティングした場合シウォンはどちらを選ぶのか、ミレの友達たちからの偏見にどう言い返すか、などドタバタしながら物語は進み、最終的に、シウォンは「ソリといる未来」「ミレといる未来」のどちらを選ぶのか、という問題に結論を出して小説は終わる。ネタバレはしないでおくけれど、私はシウォンの選択はとても正しいと思った。

パートナーを1人に限定しない恋愛スタイルは、「浮気者の言い訳」として周囲に白い目で見られてしまうことが多い。残念ながら本当に「浮気者の言い訳」なケースもあるし、さらに女性が「オープン・リレーションシップOK」というと、男性に「軽く扱ってもいい女」だと勘違いされることもあると、ミレは不満を持つ。しかし『私の最高の彼氏とその彼女』におけるミレとシウォンとソリは、全員が誠実だ。私は率直に、「こんな関係もいいな」と思った。