僕の家で寝ることに

翌週の飲み会は土曜日だったため、銭湯へ一緒に行った後、そのまま僕の家に泊まることになった。朝2時ぐらいまで飲み続け、寝ることになった。正式に付き合っているわけではないからエロいことを大学同級生にするわけにはいかない。これまでの付き合っていない人とのエロは、相手が「ヤろ!」と誘ってくるからやったものばかりだが、亜子さんは誘ってきていない。

そんなわけで、彼女にはTシャツとスエットパンツを貸し、布団を譲り、僕はこたつで寝た。「おやすみ」「おやすみ~」と言い合うも、隣に女性がいるこの状況、寝られるわけがない。彼女のセックスはどのようなものなのか、といったことを想像すると興奮してしまうのだが、亡くなった彼女のことを考えると罪悪感が湧くとともに、亜子さんが大学の同級生である、という2つの理由から「そっちに行っていい?」とは言えなかった。

「ニノミヤ君、寝れる?」
「いや、まだ寝れないね」
「じゃあ、もう少し喋ろうよ」と彼女は言い、起きてきて我々はこたつに入り、5時まで酒を飲み続けた。さすがにその時間になると眠くなり、今度こそ本当に寝た。11時まで寝て彼女を駅に送って行った。

Facebookの彼女の名前が…

その後、彼女が僕の家に来ることはなくなったが、2人だけの飲み会は2年ほど続いた。その後は、彼女の仕事仲間や僕の知人も交えた飲み会が続き、ある時、彼女のFacebookの名前が変わった。苗字が二つあるのだ。つまり旧姓と現在の姓があるということである。

それ以降会うことはなかったが、「何もないエロい関係」という言葉を亜子さんとの時間では思い出す。本当に亜子さんがどう考えてあそこまで会ってくれたのかはよく分からないし、一生聞くことはないだろう。だが、我が家で一晩を過ごしたあの日はエロい思い出としてずっと残っているし、いつかまた会うこともあるだろう。

Text/中川淳一郎