結婚前の不安は少ない方がいいけれど

さて、あなたは今付き合っている彼との結婚は難しいと感じる理由として、家柄や居住地、生育歴、信仰を挙げられています。
信仰については……かなり難しい問題ですね。
彼の信仰しているものがあなたにとって理解し難い、一緒に生活をするうえで様々な制限を強いられるとなると、あなたの言う通り“乗り越えなくてはいけない問題”と言っても差し支えないでしょう。
ですが、その他については果たしてそこまで高いハードルとなるでしょうか?

たとえばあなたの家が由緒ある一族で、親御さんに「結婚する相手は東大出身じゃないとダメ。最低でも年収が1000万円以上ないと認めない」と昔から言い含められていて、彼と結婚するとなると親と縁を切る必要があるとか。彼が母子家庭育ちのひとりっ子で義理のお母さんになる人がすでに介護必須のため、結婚してすぐの同居が絶対条件だとか。ずっと憧れだった職業に努力して就いたけれど、結婚して彼のもとへ行くとなると仕事を辞めなければならないとか。そういった特別な事情があるのなら理解できます。
たしかに、幼馴染の彼とは付き合いが長いぶん、最初からそういった心配の種はないのでしょうが、今付き合っている彼に関していえばたった2ヶ月で何がわかるというのでしょう。
あなたが彼との間で気になっている部分は、他人同士が家族をつくって一緒に暮らすとなると誰だってぶつかる問題ですし、おそらく付き合って2ヶ月なら表面の情報をさらっと聞いただけに過ぎないのではないでしょうか。

幼馴染の彼に「年末ぐらいまでの答えを」と期限を切られているせいで焦っているのかもしれませんが、現時点であなたが不安に感じている部分を恋人の彼はどの程度自覚していてどういう考えを持っているのか、あなたにどこまで歩み寄るつもりなのか、あなたにどこまでの理解と寄り添いを求めているかを聞いてはじめて、それが乗り越えなくてはいけない問題かどうかの判断に至るはずです。

15年来の幼馴染の彼と、付き合って2ヶ月の今の彼。そりゃあ付き合いの長さから言っても幼馴染の彼に軍配は上がるのかもしれませんが、あなたのしているのは単位の違うものを比較している行為に思えます。
相手が誰であろうが、結婚前に考えなくてはいけない問題のひとつや二つは当たり前のように発生しますし、結婚後だって新たな問題はいくらでも出てきます。
もちろん結婚前の時点で心配事は少なければ少ないほうがいいのは言わずもがなですが、結婚前の時点で大丈夫だから結婚してからも大丈夫に決まってる! と安心しきってしまうのは少々安直なように感じました。

周囲の意見ではなく、自分の考えた基準で決断を

幼馴染の彼とは、人生観や恋愛観などについて長い時間をかけてよく話してきたぶん、信頼もあり心配事も少ないのでしょう。
ですが、あくまでも友達として、恋愛対象外としての彼しか知らないはずです。
恋人や配偶者に見せる顔と、友達に見せる顔は誰しも違います。
いくら友達としての付き合いが長かろうが、過去にどんな恋愛をしてきたのか本人の口から事細かに聞いていようが、実際に体験するのとそうでないとでは天と地ほどの差があります。
にもかかわらず「条件がいいから」という理由のみで結婚するのは浅慮な印象を受けますし、「私のことを一番好きでいてくれる」だなんて何を根拠にそんな風に自信満々に言い切れるのでしょう。
わたしにはあなたがそのあたりをきちんと理解できていないように感じて少し心配です。

ひとつ気になったのは、あなたが相談文の中で繰り返し「条件」という言葉をつかっている点。
恋人の彼については公務員という情報も書かれていることから、どうやらあなたは結婚にあたって条件というものをとても重要視されているようです。
深い意味はなくつかっているのかもしれませんが、相手のスペックについてだけでなく、自分にとって都合がいいかという意味も孕んでいるのではないでしょうか。
そういった観点から言っても、幼馴染の彼は好条件なのでしょう。
彼氏の存在を知ったうえでの告白、そして彼氏と別れてくれるならすぐに付き合えなくてもいい、気持ちの整理がつくまで待ってくれると言ってくれているのですから、こちらとしてはかなりラッキーですよね。加えて親も大賛成となれば、結婚に付随する面倒事のアレコレをスキップできるのですから楽チンです。

でも、客観的な立場から見たときに、幼馴染の彼はそれほど好条件なのかな? と思うのです。
たしかに、あなたの親御さんからしてみれば、身元がハッキリしていて人となりを知っている幼馴染は娘の結婚相手としてこれ以上ないでしょうね。
しかし結婚となると新しい戸籍をつくることになります。要するに、別の家庭なのです。基本的には親のほうが先に死ぬわけで、これから先何十年も生活を共にするのは親ではなく配偶者です。
たまにしか会わない親の「幼馴染との結婚は大賛成だよ!」というたった一声を、自分の人生を決断するための強い後押しにするのはいかがなものかな、と。
そういった観点からも、親の言葉を切り離したうえで、これまでどうあなたがどうしたいかを最優先に考えることをおすすめします。

そもそも、幼馴染の彼が「年末くらいまでに決断してほしい」と期限を切っていることにも疑問があります。
ずるずると長引かせるのが好ましくないのは理解できますし、書かれていないだけで何か事情があるのかもしれませんが……。
また「刹那的な恋愛を辞めたほうがあなたのためにも付き合っている彼のためにもなる」という言葉も、どうして彼がそんなことを言えるのかな、と。

相談文から、あなたが幼馴染の彼を妄信しているように受け取れて、心配になってしまいます。
たしかに15年の付き合いは長いと思います。ですが、結婚したらその何倍もの時間を過ごすことになります。
現時点で付き合いが長くて一番の理解者である幼馴染の彼がこう言ってるから、で物事を判断するのではなく、自分の考えを基準に決断したほうがいいのではないでしょうか。