好きな人からLINEがきたら行ってしまう。死んでもいいと思える感情の高ぶりは財産になる

「お正月にあなたの夢を見たよ」

by Annette Sousa

新しい年がもうすぐ始まる。髪を切るため久しぶりに表参道に行ったら、街は飾られ、人は動き回り、年末だ~!! とテンションが上がった。美容師さんとお正月の話になり、「初夢は他人に教えない方がいいらしいですよ」と教えてもらう。誰にも教えなければ、初夢は正夢になって、夢が叶うらしい。

後で調べると、この話は『初夢長者』という昔話に由来しているようだ。長者に「お金を出すから初夢を教えて」と言われるが頑なに教えなかった男は、長者の怒りを買い、鬼ヶ島におくられてしまう。鬼に食べられそうになりつつも逆に鬼の宝物を盗み、それをうまく使って鬼ヶ島脱出した後に、東と西の両方の長者の婿になることに成功。実は「金の大黒様を前と後ろに抱いた夢」という初夢を他人に口外しなかったことにより、まわりまわって夢が叶ったのであった……。という話。

そういえば、私にも似たような経験がある。数年前、正月休みにゴロゴロしていたところ、浅い眠りの中で、前にいた会社の同僚とセックスする夢を見た。特に好きというわけではなかったが、妙にリアリティのある夢だったので、なんとなく彼のことが気になってくる。とはいえもう退職しているので会う機会もないし……と思っていたところ、数週間後に急に彼から連絡が来て、メッセージのやりとりをしているうちにご飯に行くことになった。

「そういえば、お正月にあなたの夢を見たよ」「え、おれが出てきたの?どんな夢?」「いや、それは言えないけど」「え、気になる。教えて」「いや、絶対に言わない。恥ずかしいし」「恥ずかしい?どういうこと?」「ははは。言わない」

結局そのまま彼の家に行って、セックスをした。後で「どうだった?」と聞かれたので「夢で見たのと少し違った」と言ったら「またそうやって気になる言い方する!」と笑われた。彼が夢で見たより優しくて、かわいかったから、けっこう本当に好きになってしまい、その後しばらく私たちは頻繁に会い、たくさん話し、出かけ、寝た。でも季節が一周するとなんとなく自然に終わってしまったので、初夢の効果って一年くらいなのかもしれない。

フロイトは「夢は本能的な欲望の表れ」と言った。普段は考えていなくても無意識的に欲望していることが夢としてあらわれるという説である。そうなのかもしれないが、どちらかというと私の感覚では、「彼と実はセックスしたかったからセックスする夢を見た」というより、「彼とセックスする夢を見たから実際にセックスしたくなった」というほうがしっくりくる。焼き鳥屋の前を通りがかったら無性に焼き鳥が食べたくなってきた、みたいな感じで。

焼き鳥はだいたいおいしいから、焼き鳥屋で嫌な思いをすることは少ない。評価「★1」の焼き鳥屋ってあまりない気がするが、とはいえお店に入ってみないとわからないから、調べずに入るのは少し緊張する。それでも魅力的なにおいに誘われて、たとえ他の用事があったとしても、なんとなくお店に入っていってしまう。私はそういうタイプの人間で、そのことを誇りに思っている。