他人の悩みは、ぜいたくな悩み
既婚者が未婚者に夫婦生活の愚痴をこぼしても、それは「贅沢な悩み」だと言われてもしょうがない。
先日そんなことを考えさせられる出来事があった。
実際に私が独身の友人にそう言われてハッとしてしまったのだ。
一瞬、彼女に嫌な思いをさせてしまったかな?と焦って、「まあ、それぞれの人生のステージで、悩みは尽きないってことだよ」なんてフォローをしてみたが説得力が足りない。
その友人は私の愚痴を聞いている間、「結婚してる人だからこそ言える悩みだよなぁ…」と脱力しつつ聞いていたのだろう。
既婚者。未婚者。この差は確かに大きい。結婚というのは、なかなかお手軽にできることじゃないからだ。ほかにも「子持ちの既婚者」と、「そうでない既婚者」の差も大きいと感じている。
私が子持ちの女性から「子供はまだ?」なんて聞かれるのは、唐突に水を顔にかけられるくらい冷やっとする。そして、その質問をなげかけてくる人と私の間には、超えられない大河があることに気がつくのだ。
今回の出来事では、そう簡単に体験できないことを「している人」を「していない人」が見ると、「していない人」側からはこの大河が見えやすくなっていることを忘れていた。
夫婦生活の愚痴を話した時、「結婚をしている人」である私は当然、独身の友人に嫌がらせを言うつもりなんてなかった。 なんなら、自分の弱い面を素直に見せていることで、彼女と私の距離が近づくくらいに思っていた。
今回彼女に「贅沢な悩み」と言われたことで、それほどに「している人」というのは無意識に「していない人」に対して言葉をぶつけている、と実感できた。
これから自分が「している人」から何か言われて嫌な思いをしたとしても、その人は何も悪気がない、と信じようと思う。
同時に、私が「していない人」と話をするときは、無意識に相手の気持ちを悪くさせているかもしれないことを注意しようと思う。
Text/中村綾花
初出:2015.10.11