「まっすぐに恋をする」ということ
白髪混じりで、両親と並んでも同世代に見えてしまう35歳の女性は、実はメタル好き。テレビカメラの前で、メタル音楽に合わせて ヘッドバンキングする彼女に私は一瞬で心を奪われました。髪の毛や皮膚は年を老いていても、目は少女のように透き通って、ウソが一切ないのです。
そんな彼女の理想の男性は、「メタルミュージシャンのようにロングヘアー」だったのですが、デートに現れた男性は、天井つるっぱげの30代のメガネ男子。彼女はそんな彼を見て、まるでマンガの主人公のように驚きを顔に出してしまいます。
でも、それがまたキュートで、ますます引き込まれてしまうのです。
彼女の前に現れた彼も障害を持っていて、ゆっくり、ゆっくりと話すのですが、ピアノバーで彼女のために一曲披露。音楽好きが2人の距離を一気に縮め、あっという間にキラキラと輝くオーラに包まれるのがわかりました。
彼女は彼とのデートの感想を求められ「私は、まるで星になったみたい」と、目をウルウルさせて言います。
なんて純粋なキラキラなんだろう。もう、私は彼女のまぶしさに打ち抜かれて涙が出てきました。
彼女は、自身の障害のせいで子供を持つことを諦めています。だからこそ、保育園で子供の面倒を見る補助的な仕事を自身で選んで勤めています。そういう事情は、やはり辛く感じてしまうけれど、恋が人生を輝かせてくれることを彼女に改めて教えられたのでした。
まっすぐ相手を見て、まっすぐ恋をする。初めての恋をする彼女ができることなのに、何度か恋をしたことのある私たちには、なんて難しいことなんだろう、なんて。
Text/中村綾花
- 1
- 2