恋愛してる自分が一番好きだった

田中美津さん画像

――経験した中で、印象に残る恋愛はありましたか?

田中

(沈黙して考える)…どの恋愛だろう。

吉峯

ご著書を読む限りですが、40歳ぐらいの時に不倫されてますよね? その話はけっこう大変だったんだなと思いましたね。

田中

不倫はたくさんしたから…どれ?(笑)

吉峯

ご自身が作詞作曲した歌になってる……いい歌ですよねあの歌。

田中

(鼻歌で歌う~♪) うん、たぶんあの男だな。

吉峯

そうそうそれ。あの歌を田中さんが作ったっていうのが意外な感じがして。

田中

それってさ、自分にとってすごく大事な恋愛だということで、いわば特別のシルシをつけたくて作った歌のような気がするのよね。今思うと。 歌は残ったけど男は果ていずこへ…。

一同:(笑)

田中

なんか、恋愛してる私が一番好きだったみたい、男以上に。
だって世の中のことで怒ったり憂いたりしてるだけじゃ…(笑)なんとなく人生、イマイチじゃない?
だからその時々適当な対象が現れると、さぁ、恋愛だ!って。張り切ってベッドインして、もう一緒に居るだけで幸せ状態になるんだけれど、でも結局そこまでいくと同じことの繰り返しになるから。徐々に飽きちゃうっていうか。

自分を生きるっていうことと、恋を生きるっていうことはイコールじゃないような。恋に生きることが、自分のすべてを生きることになるのって、それほど長い間じゃなくて。私の場合、恋を生きるおもしろさより、自分を生きるおもしろさの方が、やがて優ってしまうのよね。
若い女の人が恋愛恋愛って思うのは、未だそれ以外に自分の魅力を証明する手段がないっていうか、恋愛は一番手っ取り早い自己表現だからじゃないかしら。

――今の若い世代って、恋愛も自己実現も両方しなくちゃいけないと言われすぎて、自分らしさがその下に埋没していっている感じがしています。他人の意見を一回横において、自分らしく生きるためにはどうしたらいいでしょうか?

田中

でも誰かに好かれようと思ってやさしげにふるまうのも、実は自分らしさなんだと思う。

不機嫌な時はブスッとしてるのが私らしい私で、そんな時でもナヨナヨしてるあれは嘘の自分だって言っても、ブスッもナヨナヨもみんな「私らしさ」じゃないかしら。だから男にナヨナヨしたいときは、根性入れてナヨナヨしたらいい、と。そうすることがバカバカしくなれば、また別な自分を見つけるはずだし。自分のやることは全部自分らしさだと思ったらいいのよ。こういうことやると自立する女じゃなくなっちゃうとか思って自分をコントロールするのが一番つまらない。

50歳ぐらいで生理がなくなると、男に対する性的な欲望もパタッとなくなって、それと同時に目の前の世界が広々として来たというという人が圧倒的に多いのよね。男も、面白い男とどうでもいい男がいるだけのことで。性欲がなくなればバカな男はバカにしか見えない。

――なるほど!「バカな男だけどときめいちゃう」というのはなくなるんですね。

田中

いや、バカだけど、いいんじゃないの、こういうのも居て…って感じよ。
やがてはそんなスッキリした世界に立てるんだから、50歳までは右往左往してていいんじゃないか、と。バカなこともしっかりやった上で、バカじゃなくなっていくのがいいんだから(笑)
ときめく心っていくつになっても、ずっと持ち続ける人もいるし。最初からないような人もいるし。映画や本やいろんなものを通じて、ときめく心を失わないようにしてれば、男に対してもそう。特別に男にだけときめいて、あとはぜんぜんときめかないなんて人は見たことがないし。

ときめきって、嘘のときめきもホントのときめきも無いのよね。ときめきは、ときめきなのよ。
だからときめいた人が勝ちというか、ときめいた人生を生きるっていうことが、実は私たち生きる目的なんですって言っても、そんなに間違ってないと思うのね。

――かなり勇気づけられました…これでいいんだって思えました。

田中

そう、迷い悩む、ときめくあなたでいいんですよ。

映画『この星は、私の星じゃない』が上映中

監督:吉峯美和
出演:田中美津、米津知子、小泉らもん、上野千鶴子他
配給:パンドラ/2019年/日本
名古屋シネマスコーレで11月16日(土)、横浜シネマリンで11月23日(土)より順次上映。
横浜シネマリン公開初日は田中美津さんご本人が、24(日)の上映後には監督の吉峯美和さんがご登壇予定です。
詳細は公式サイトよりご覧ください。

TEXT/AM編集部