バカな自分も大事に生きる
- 田中
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とにかく若い子は、女性誌に出てくる自立したカッコいい女の人を見て、最短でそういうふうになろうなんて思わないほうがいい。その人たちだってたくさんのバカやってそこにたどりついてるんだから。その人たちが正直にそのバカの部分も語ってくれればいいんだけどね。
――きれいなところばっかり見ると、私にはできないってなっちゃいます
- 田中
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何もしたいことがなければ何もしないでボーっとしてればいいし、したいことがあったら、くだらないことでも全力でやってみて、その挙句にこんなことに夢中になるなんて、自分はバカだなぁということがわかったら、また次の一歩が見えてくる。
「これをすると、こうなっちゃう」とやらなくても見えるときがある。でもね、ほんとにしたいことならやってみるのがいいと思うの。それで、傷つくことを怖がらないで。傷つかないように傷つかないように生きようと思うとね、ビクビクしながら不安を生きることになってしまうから。でも、やりたいと思ってやって、「私ってバカだなあ」ってわかると、バカにもご利益が出てくるから。
一同:(笑)
- 田中
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バカだなあって思うたびに成長はしてるのよ。だから安心してバカやったらいい。やってみて、それがどんなに空しいことかということがわかればいいし、わからないままに例えば結婚までいっちゃったとしたら、その日々の中で「ああ、なんだか空しい」と知るかもしれないし。
ほんっとにこんな人生嫌だっ!って思わない限り、自分を変えることなんてできない。生き方を教えてくれる本なんて読んだってダメよ。本でなんか勉強してると、どんどんつまんない人になっちゃう。とにかく小さい自分も大きな自分もしっかり生きていくのがいいと思う。小さい自分っていうのは、「あんな男に惚れちゃった情けない私」ということかもしれない。でもね、バカな男はたくさんいるのに、全部のバカに惚れるわけじゃなくて、そのバカに惚れたんだから意味はあるのよ。
そうして「ああほんっとうにバカな男だった」と気がつけば、気がついた分だけマシな私になっている。そんな手間暇をかけて生きてく人って、今じゃ少数派かもしれないけど。
- 吉峯
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やりたいことにブレーキをかけちゃう。後になって「やっときゃあよかった」って、やらなかったことが価値のある事のように思っちゃう。実際やってみればそうでもないのに。
――まさに…!
- 田中
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無難な方に無難なほうにと生きてると、生命力って弱くなってしまうんだよね。
――若い女性が主体性を獲得するためには、ちょっとでもやりたいことは全部やってみるのがいいんですね。悪いことも含めて。
- 田中
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私なんか若い時に、780円の万引きで捕まったこともあるのよ。盗む気なんてなかったし、お金持ってたんだから払えばいいのに、間違えられたことに無性に腹が立ってプン!っていう顔をしてたら警察に連れていかれちゃって。
万引きしたって認めなかったら、2泊3日も留置場に入れられてたんだけど、その間いろんな女性たちを垣間見ることができて面白かった。会社のお金を横領した美貌のOLとか、男と詐欺を働いた容疑の女とかね。便秘症の私が「何か薬をください」と看守に頼んでるのを聞いて、薬を回してくれたのは、別の檻に入れられてた、タブン売春で捕まってた人だったと思う。
「そんなことを体験することが何になるの」と言われると困るけど、いわば山本周五郎の世界をナマで体験したって感じで、私を一層人間好きにしてくれたことは確かね。以来、万引きに間違われるような行動は絶対にしないようにしているけど(笑)。
あなたたちの人生の目的が、平穏無事に生きることだったり、有名になることとか社会的地位が上がることだったらあんまりお勧めできないことだけど、でも、年をとってもイキイキしてて、若い人たちから、この人に相談したいと思われるようなシニアになりたかったら、たまには世間の底辺を知ってみるのもいいんじゃないの。あ、万引きはダメよ。ほら、日比谷公園で歳末の炊き出しを手伝うとか、いろいろあるでしょう。
世の中を広く見ていくと、やたらに他人を断罪しないヒトになれるし。自分がバカだと、他人のバカも許せるようになる。もちろん、人を利用したり依存してくるだけのバカは、別よ。
私の万引き体験の話は、許せるバカの範囲が広くなったということで、全部のバカを赦しちゃうという話じゃないのだから。そう、不倫だってなんだって、その気になってしまったら、やってみたらいいんじゃないかと思うのね。そのことでゴタゴタしないように、秘密をしっかり抱え通せれば、芯のある女性になれるかもしれないし。
やるのは自由、でもやった責任から逃げないこと。この戒律が守れれば、バカなこともやりつつ、大人になっていくのもいいんじゃないかしら。そんな女もいて欲しい。
――次回は田中美津さんの恋愛遍歴について詳しく伺っていきます!
映画『この星は、私の星じゃない』
監督:吉峯美和
出演:田中美津、米津知子、小泉らもん、上野千鶴子他
配給:パンドラ/2019年/日本
名古屋シネマスコーレで11月16日(土)、横浜シネマリンで11月23日(土)より順次公開予定。
横浜シネマリン公開初日は田中美津さんご本人が、24(日)の上映後には監督の吉峰美和さんがご登壇予定です。
詳細は公式サイトよりご覧ください。
TEXT/AM編集部