「理想の女」を生きたくないからリブをはじめた
- 田中
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でもね、私の若い頃より今の方が、まだ良いわよ。私は家族だけには恵まれてて、「お前のままでいいんだよ」って育てられて、高校出て世の中に出たら、他人とどう繋がっていったらいいか、わからなくて……。
リブが出現する以前は、男の目から見ての「いい女」を生きてる人がほとんどだったの。私もね、頑張って、なんとか男からいい女と思われるようにしたんだけど、そうやって選ばれて付き合ってもつまらないのよね!「あら、そうなの!知らなかったぁ!」などと、男のつまらない話に相槌を打つだけだから(笑)。
男に選ばれてもロクな人生にはならないと、とことん知った上で、ウーマン・リブの運動を始めたんだけど、これやったら、「男ならバカでも殿様」の世の中が、めちゃくちゃ攻撃してくるだろうってことは始める前から分かっていた。それでもこの状態を続けるよりマシだと思って、「女らしさより、自分らしさが大事と思う女、この指とまれ」って指を立てたのね。そうしたら、女であることに苦しんでる人が世の中にはたくさんいるんだってすぐにわかった。だって集会とかデモでまいたら、私のチラシを、もう、女たちが奪うように持って行ったのよ。嬉しかったなぁ、あの時。これで、点じゃなくて面になれるって思った。一人で問題を抱えてないで面になってみんなで考えるって。大事なことよね。あなたたちは、身近な友達の中に自分と面になれる人がいるでしょ。
――たしかに、いますね。
- 田中
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そういう人が身近にいるくらいにはなったのよね、今は。
――言われてみれば本当にそうですね。今も悩みはたくさんありますが、そこが全然違うんですね。
- 田中
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私はたまたま生まれた家がああしろこうしろっていうことを一切言わない家で、「お前のままでいいんだよ」って言われて育ったから、一人で敢然と「この指とまれ!」と呼び掛けることができたんだと思うのね。
もちろん自分を作り上げたっていう部分だって、無くは無いわよ。半分はそうだとしても、残り半分は育った環境や家族が関係してるんだと思うのね。それだから、未だになんていう生き方してるのよって思ってしまうような人でも、全面的に否定なんてできない。
自分だって半分はたまたま。その人だってそう、半分はたまたまで、ただ私とはそのベクトルが違うだけ。長年女性解放やってきたけど、少しでもラクになろうと思って結婚して、ラクになるどころか、パートやりつつ子育てして、家事やって、帰りの遅い夫を待ちながら擦り減っていく女の人たち、彼女たちに届く言葉を持てるといいなっていつも思ってきたのよね。
顔を背けたくなるような現実を生きている人たちには、それなりの理由があるんだから。たとえば恋愛を結婚に結びつけて成就した気になり、それが救いになると思ってる人がいるんだよね。救いになんかならないって自分の親たちを見ればわかるはずなのに。結婚は、絶対的に人生に必要なものじゃないって思ってる、早くわかったほうが楽じゃない? 仕事に向いている人もいれば、結婚に向いてる人もいる。なんだって向き不向きがあるんだから、無理して結婚する必要なんてないしね。
何がいっとう大事かっていうと食いっぱぐれないってことで、そして選択を間違えたら引き返せるだけの体力と気力があれば、人はもっと自由に生きられるはず。
- 吉峯
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手に職がついてれば、恋愛して結婚も可能じゃないですか。それで嫌になったらやめることができるし。手に職がないと、結婚にしがみついてないといけないし…仕事があったら選べる。結婚しようがしまいが、恋愛しようがしまいが、子どもを産む産まないも…迷うことはあっても選択肢はある。
――手に職があることでいろいろなことが解決しますね…