「いいことだけでなく、やりたかったら時にバカなこともしてしまう」私らしく生きる秘訣/田中美津さん

1970年代、女性解放運動として立ち上がったウーマン・リブ。
その先導者として活動していた田中美津さんの現在を4年にわたって追った映画『この星は、私の星じゃない』が現在公開中です。

AMでは田中美津さんご本人と、監督の吉峯美和さんにインタビューを敢行。
前編では、映画の制作の経緯から、「やりたいことをやる」女性につきまとう孤独についてお聞きしました。

★映画のストーリーや取材当日に行われたトークイベントについては、こちらの記事からごらんください!
【「女性解放より私の解放が大事」ウーマン・リブの主導者田中美津を追う映画『この星は、私の星じゃない』】

田中美津さん・吉峯美和監督画像

「この人に聞かなきゃ!」の勘がはたらいた

――今回の映画について、製作の経緯を伺えたらと思います。

吉峯美和監督(以下、吉峯)

2015年にNHKで放送された、戦後70年の女性の歴史を90分でまとめる番組( 戦後史証言プロジェクト 日本人は何をめざしてきたのか )のディレクターを担当した時に、ウーマン・リブのレジェンドということで話を聞きたくて取材を申し込んだんですけど、断られちゃって(笑)
ちょうど田中さんが「この子、は沖縄だ」プロジェクトを始めたころで、本当にお忙しくしていらっしゃったんですよ。
で、とても昔話なんかテレビで話してる余裕はないって、お断りになられたんですが、どうしても70年の歴史の中で重要なものだという直感があって。私もその時はじめて存在を知ったという感じだったのですが、「ここに血脈があるに違いない!」と直感だけは働いて。何度も何度もしつこくお願いして、4回目に会ったときに「いいよ」って言ってもらえて。

田中美津さん(以下、田中)

あんまりしつこくて、引き受けた方が楽だなと思って(笑)。

吉峯

それで撮影させていただきました。
その勘が当たっていて、お話が現代の人に通じるものだったんですよね。女性解放の番組なのに、「女性解放より私の解放が大事でしょ」って。だから、昔話だけじゃなくて今の田中さんを撮りたいなと思ったのがきっかけです。

――田中さんご自身は、映画にまでしたいと言われてどうでしたか?

田中

映画の件も断ってたのよ。でも、あまりにも熱心だから…うーん、見たところそんなに悪そうな人でもないし、ま、いいんじゃないかなーって、なんとなく思って。勘よね、勘で決めました。

――実際に出来上がった映画をご覧になっていかがでしたか?

田中

嘘の部分がないなって。観ててもそんな感じでしょ?

吉峯

テレビ番組だと最初に台本があって、ある程度それに合わせながら作らなきゃいけないところがあって。映画の方が自由で、何も考えないで、美津さんのやってること言ってること全部撮ろうとして撮り始めました。

――その姿勢は田中さんのおっしゃることとも共通すると思います。
でも、したいことがあって、それを第一に優先すると、だれでも孤独になってしまいがちです。

田中

自分を生きたいんだったら孤独に強くなるしかないのよね。
だって人生は自分以外の者として生きるか自分として生きるかの二者択一だとすれば……孤独と二人三脚することになろうと、もう、自分として生きるしかないじゃん! 
自分以外のものになる生き方って、相手が望むように振る舞うってことでしょ。で、部屋に帰ると一人孤独になって……。孤独の質が違うのよね。自分を生きてることで生じる孤独と、他人に好かれようとして自分を演じてしまう孤独では。

――あー!本当ですね!

田中

好かれようと振る舞っての孤独って、どんどん自分が弱くなっていくような、無くなっていくような寂しさだからね。だったらそのまんまの自分として生きる孤独の方が、まだしも悩み甲斐があると思うんですよね。