自戒の意味も込めた「人と比べてはいけない」
少し話は逸れますが、本題に入る前にわたしの話をさせてください。
わたしはお金持ちの男性とお付き合いしたことはないのですが、いわゆるお金持ち大学に通っていました。
学生のほとんどは裕福な家庭の子息ばかりで、わたしのような一般的な家庭の学生はほんの一握り。
わたしの実家は決してお金持ちではありませんが、それでも愛情たっぷりに育ててもらったと感じていますし、かなり無理をして大学に行かせてもらったことで現在自立して生活できていますから、両親には心から感謝しています。
あなたと同じように、自分が育った環境を恥じていませんし、「どうしてうちはお金持ちじゃないんだ」と思ったこともありません。
でも、正直なところ大学に通っていた当時は結構つらかったんですよね。
わたしの通っていた学部は結構勉強がたいへんだったため、学年が上がるにつれてバイトをする時間なんてあるはずもなく、今思い返してもわたしはかなりの貧乏学生でした。
数少ない服を着まわしていれば「いつも同じ服着てない? なんで買わないの?」と笑われたり、ヒィヒィ言いながら毎日切り詰めて生活していれば「なんでそんなにお金がないの? 親からもらえばいいじゃん」と疑問に思われたり、電車を乗り継いで片道2時間かけて通っていると「親に車買ってもらえばいいのに」と当たり前のように言われたり……。
相手はわたしの生活に心から疑問を感じ、よかれと思ってアドバイスをしてくれていたのでしょうが、「いや! そんなの無理だから! ただでさえ苦しい中学費を出してもらってるのに! つーかお金を持ってるのはお前じゃなくてお前の親だろ!」といちいち憤慨していたのを今でも覚えています。
現在、自分の食い扶持を自分で稼ぐようになってから、当時のわたしは自覚なしに卑屈な考えで周囲の人を「お金持ち」と一括りにしてみていたな、ということに気づきました。
この連載で、散々「人と比べてはいけない」と偉そうなことを言っているくせに、わたしはそれをやってしまっていたんです。
いやはや、お恥ずかしい限りです。そんな自戒の意味も込めて「人と比べてはいけない」と言っているのかもしれません。
社会に出て、お金を稼ぐ大変さを味わって、お金の価値を知って、学生の頃よりも広い世界でいろいろな人とコミュニケーションを取るようになって初めて、ようやくわかったんです。
「お金持ち」とひとえに言っても、皆が皆同じ価値観ではありません。
自分が置かれている環境こそがこの世の常識で、他の人も自分と同じだと思い込み、あたかも経済格差なんて存在しないかのように「え? なんでこうしないの?」「本人の努力不足でしょ」と無意識的な発言をする人。
自分は経済的に恵まれていて、でもそれは親の力であって自分が築き上げたものではないと認識があり、嫉妬の対象とならないように常日頃から言動に気を配っている人。
様々な価値観の人がいて当たり前で、それは決して一括りにできるものではないはずです。
わりと客観的に物事を見られるようになったとはいえ、わたしは今でも前者のタイプと遭遇すると卑屈にはならないにしても「うわ! うるせ!」と距離を取りたくなりますし、逆に後者のタイプであれば背景を気にせず楽しく仲良くなることができます。