食べたいものを食べるように、恋することも我慢しない

――30代で、まだ恋愛したい衝動がくすぶっている人もいます。恋したい衝動は早めに解消したほうがいいと思いますか?

大九

なんでも早めに解消したほうがいいんじゃないですか? カレー食べたいと思ったらその日のうちに食べたらいいとか、そのぐらいの感じだと思いますけどね。何を我慢する必要があるんですか? って感じです。間違いなく世間は数年後にはあなたの恥ずかしい恋愛のことなんて1ミリも覚えてないから、いっぱい恥かいておいたほうがいいですよ。

――大九監督にも、恋がしたいからと、すごく衝動的になることがありましたか?

大九

私もあったと思います。当時婚活サイトがあったら私もやってたかもしれないし。でもとにかくくだらないプライドが高かったんで、合コンを一度もしないまま青春を終えたことを今後悔していて。ものを作るってことがなによりしたかったので、もの作りにプラスになるならやりたいなと思ったりする半面、仲間から小馬鹿にされたくないっていう気持ちもあって。自分が彼氏がいることもすっごい隠してたり。恋愛なんかにうつつを抜かしてる人間だと思われたくないとか、20代前半のころはそんな感じでした。

――くだらないプライドとわかっていても捨てられない人も多いと思いますが、それがなくなるきっかけはありましたか?

大九

気にならなくならないまんま若者時代を終えた(笑) ずっと気になるんじゃないですか?

くだらないプライドみたいなものはいくつになってもあります。恋愛に限らず、立派な人なんていないんで。恋愛しないのも否定しないです私。むしろ、そういうことで居心地いいんだったらその暮らしを守るってことも素敵だし。でもちょっとでも興味があるなら、一回傷ついてみるのもいいかもしれない。

――失恋すると自分だけがこの世で一番つらいような気持ちになってしまいがちです。監督自身は失恋したとき、どのように過ごしていましたか?

大九

私は文字に書くっていうことはめちゃくちゃしてました。エッセイじゃないけど、別に誰に見せるってことでもなく、感情をぶつけるみたいに。人に言うのはつらすぎて言えないんだったら書いておく。その時から表紙に「残そう!捨てよう!」って書いてて、それを見た彼氏が「君映画とか作ったらおもしろいと思うよ」って言ってくれて。その人と続いてても私幸せじゃなかったと思いますけど。

――ターニングポイントになる人と、一緒にいて幸せになる人は違うこともありますよね。

大九

そう思います。

――失恋はいい経験になりますか?

大九

うん。なりますね。すごい人間修行。大事な瞬間じゃないですかね。車の運転する人としない人ぐらいに近いですけどね。私の中では。

私、車の免許持ってないんですけど、持たないまんま、車を運転しないまま死んでいくんだなって思うとちょっと寂しいなって思う瞬間があるんですよ。もう一生、車でなにかすることはないんだなと思うとなんとなくさみしくなるけど、恋愛もその程度だと思いますけどね。運転できる人からすると、もったいないとか、いろいろおっしゃりたいことはあるでしょうけど。私は免停とかにはならない。免許がないから(笑)

――「失恋めし」作品の楽しみ方を最後に教えてください。

大九

明日もいい気持ちで起きられるように、寝る前に、美味しいものを食べる気分でゆるく見ていただければと思います。

「失恋めし」(全10話)
Amazonプライム・ビデオにて一挙独占配信中
読売テレビ7月放送予定
出演:広瀬アリス 井之脇海 村杉蝉之介 臼田あさ美 安藤ニコ 若林拓也
原案:木丸みさき「失恋めし」(KADOKAWA刊)
脚本:今井雅子
監督:大九明子
音楽:髙野正樹
主題歌:Homecomings「アルペジオ」(ポニーキャニオン/IRORI Records)
©木丸みさき・KADOKAWA/ytv

【STORY】恋のはじまり⽅は…いろいろ 恋のおわり⽅も…いろいろ でも、どんなおわり⽅をしても、おなかはすく。 ひとつの恋がおわったとき、 元気をくれたのは、あの味だった-。 街のフリーペーパーでエッセイ漫画「失恋めし」の連載を持つ主人公キミマルミキ。 ミキが描くのは、彼女が街で見つけた失恋と、その傷ついた心を癒す美味しいめしの物語。 フリーペーパーを発行するSTO企画の面々に、STO企画に出入りする弁当屋のハラハチ、 そして街で出会った不器用すぎる花屋の青年。 ミキと彼らが織りなす、心に美味しい物語。