他人のために自分ができるやさしい行動
さて、今回の相談で一番気になったのは、彼が自主的に仕事を休むことに関して、あなたが「医者に言われたわけでもないのに? もしかしてただ休みたいだけ?」と少し不信感を抱いている点について。
わたしは、彼の行動はとても正しいと感じました。
自分の調子を常に気にして、本格的に体調を崩す前に自主的に休息を取るのは、自己管理ができている証拠ではないでしょうか。
「たぶんまだ大丈夫」「ちょっと頑張れば乗り切れるかも」と無理をして、心と体を酷使した結果、ドッカーン!と爆発してしまえば回復まで時間を要するわけですから、それこそ本末転倒ですよね。
目に見えない病気や障害、それこそメンタルの疾患はハタからはわからないため、理解されにくいが現状です(そのためにヘルプマークというものはありますが)。
たとえば、うつ病では人それぞれ症状や程度も違いますから、仕事や家事はできないけれど趣味や遊びなどはできる場合もあり、周囲の人に「遊べるのにどうして仕事はできないの? ほんとうは怠けてるだけなんじゃない?」と心無い言葉をかけられて苦しんでいる人もいる実態を耳にしたことはないでしょうか。
「自分はそうじゃないから」「周りにそんな人がいなかったから」で収束させて、理解する努力や思いやりを持とうとしない精神は、とても残酷なことだとわたしは思います。
他人なのだから自分とは違う部分もあるという認識は持ちつつも、違うけれど知って理解することはよい人間関係を築くためには必須ですし、「本人がつらいって言ってるのだからつらいんだろうな、じゃあ自分にできることをしよう」と寄り添うことが、他人のために自分ができるやさしい行動ではないでしょうか。
「この人とならなんとかなるでしょ」と思える結婚を
結婚というのは、他人と共存することです。
だからこそ、相手と助け合い、寄り添うことで幸せになれるのだと思います。
結婚をしたら(結婚しなくても、ですが)、思いがけない様々なことが起こります。
現時点では、彼の体調が悪くてあなたが頑張らなくてはいけないことが多いのでしょう。
彼が頼る側で、あなたが頼られる側。
でも、あなたと彼が今の関係性・立場のまま過ごし続ける確証はないはずです。
あなたが今後、彼に助けてもらう可能性、あなたが頼る側になる可能性だってあるのです。
たしかに、現時点ですでにわかっていることと、これから起こり得るかもしれないこととでは、現実的に感じる不安の大きさが違うのは重々承知しています。
でも相手を助けること、相手に助けてもらうことをお互いに気持ちよくできないのなら、結婚しても上手くいきっこないと思います。
わたしがどうして夫と結婚したのかというと、もちろん夫がサイコーにいい男で世界一番愛しているというのは大前提なのですが、死ぬまでの結婚生活をざっくり想像してみたときに「まあ、この人とならなんとかなるでしょう」と楽観的に思える相手だったから。
結婚を決めるにあたって、金銭面や仕事などの現実的な部分を無視できないのはもちろんですが、わたしはそれ以外の部分に重きを置きました。
「なにか困難にぶち当たっても、それを乗り越えるための話し合いをできる人だな」「一時的に助ける側/助けられる側になったとしても、常に対等でいられそうな人だな」と、お付き合いの中で感じられたのです。
夫は、助けてもらっている現状に胡坐をかいたり、助けてもらったことに卑屈になったりせず、助ける側になることを損だと感じず、助ける側が優位に立つと勘違いするなどの価値観を持っておらず、自分が助けてもらったら純粋に感謝できる、わたしを助けることに一切の疑問を抱かない人だとわかっていたので、結婚を決めました。
もちろん、人生は想像通りにいくことばかりではありませんから、結婚前にいくら予測していたところでダメになるときはダメになるものですが、せめてスタートの段階で「なんとかなるでしょ」と思えない相手とはどう頑張ったって上手くいきっこないとは思います。
彼自身の向き合い方、あなたへの接し方をよく観察したうえで、いい関係を築いていけるか想像してみてはいかがでしょうか。
ただ、パートナーの病気などの身体的・精神的なサポートは程度の差はあれ、決して楽なものではないですよね。社会的には生涯支え続けることが美徳とされていますし、それができている人はほんとうに立派だと思います。
もし、あなたが彼との別れを選択した結果、「彼の体が弱いから別れた」という部分だけに注目して「なんて薄情な人なんだ!」とわかったような口で非難してくる人もいるかもしれません。でも、それは「彼の体が弱くて一緒に暮らすのが大変そうだから」「結婚したときに自分ばかりが割を食いそうだから」といった表面的なことではなく、そういう事態に陥ったときの向き合い方や態度など、価値観の本質的な部分で合う/合わないの結果なわけですから、気にしなくて大丈夫。
それって、ごくありふれた普通のことですから。
「逃げる」「見捨てる」などマイナスな言葉に囚われるのではなく、「価値観が合わなかった」と自分を守る方向で受け止めてくださいね。
Text/ものすごい愛
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