親孝行≠親のために生きる

あくまでもわたしの個人的な考えですが、未成年だったり、親の庇護下で生活しているのであれば、親の話に耳を傾け、意見を仰ぎ、自分の意志だけでなんでもかんでも決めていいわけではないとは思います。
でも、成人を過ぎ、自立しているのであれば、親の言う通りにする必要はないのではないでしょうか。
あなたは27歳で、もう立派な大人ですよね。
おそらく経済的にも自立(仕送りをもらっていない、親の扶養に入っていないなど)しているでしょうから、仕事も住む場所も結婚するかどうかも子供持つかどうかも、自分ひいては一緒に人生を共にするであろうパートナーと話し合って決めていいはずなんです。

ただ、だからといって親を無下にできない気持ちはとてもよくわかります。
そりゃあそうです、だって大事な存在ですからね。
地域によっては、親の介護はプロの手を借りず子供が看るものだの、名字が途絶えないように娘しかいないのなら婿を取るだの、長男もしくは長子が家を継ぐだの、一人っ子なら地元を離れるべきではないだの……部外者からしてみれば鬱陶しい慣習だわ~と思うことがまだまだ根付いているのが実情です。

そういった土地で生まれ育った人たちの中には、親や親族からの直接的なプレッシャーはなくとも、なんとなくその考えが刷り込まれていて、“そういうものだから”という半ば無意識的なジャッジが端々に表れてしまう人も少なくないでしょう。
たとえそういった慣習がない地域でも、親には親の人生設計や生活コミュニティがあり、自分と子供の人生を重ね合わせて「地元に戻って親の近くで生きるのが親孝行」と思っていたり、地元を離れた子供を持つ人のことを「かわいそうに……」と憐れむ人が周囲にいるせいで居心地の悪さを感じていたりするのかもしれません。
まあ、そんなのこちとら知ったこっちゃねぇわって話なんですけどね。

そういった親の気持ちや昔からの価値観を全否定するつもりはない(というか今さら考え方をまるっと変えるのは無理)のですが、あくまでも自分の人生は自分だけのものだということは忘れないでほしいと思います。
あなたが自分でも言っている通り、親の意見を尊重し、彼との結婚をやめて地元に戻ったとしたら、後悔したり親を恨んだりする可能性はあるでしょう。
地元に戻ったからと言って、彼以上に好きな人が現れてその人と結婚できる確証はないですからね。

もしわたしがあなたの立場だったら、地元に戻らず彼と結婚するでしょう。
なぜなら、今回親の言う通りにしてしまうと、地元に戻ったあとの生活にもあれこれ口出しされることが予想できるからです。
一度「ここまでは譲ります」と線引きをしてしまうと、あとからそれを動かすのは容易ではありません。
それこそ、今回あなたがお母さんの言葉に「前と言ってること違うじゃん!」と戸惑ったのと同じで、親の意を汲んで地元に戻ったあと、何かあるたびに意見されそれを断ったときに「前は素直に聞いてくれたじゃない、どうして今回は反発するの?」と言われたくないから。

もちろん、わたしだって親のことは大好きです。
これまで愛情を持って育ててもらったことに対する感謝の気持ちもあります。
でも、親に感謝をして孝行することと、自分の人生を犠牲にして親のために生きていくことはイコールではないはず。
むしろ自分の人生を諦めることのほうが、ずっとずっと親不孝だとわたしは思います。

わたしは相手が親だろうと「こうしたい」と思ったら我を通すタイプなので、「いやいや、好きなところで暮らしていいって言ったじゃない。なーに今さら! 都合のいいこと言ってんのさ! お母さんが育てたようにわたしは育ったんだから、素直に親の言うことを聞くタイプじゃないってことぐらいわかってるでしょ!」くらいは言ってしまうでしょうね。

とはいえ、結婚を反対している理由が、たとえば彼が仕事をしていないとか、借金を抱えているとか、自分自身の体が弱くて親のサポートなしには生活ができないとか、娘を心配する気持ちからの発言だったら耳を傾けますが、「将来的な介護が~」「離れて暮らすのはさみしいから~」という親自身が感じている不安からの発言であれば、納得するに値しないな、と思うのです。

現実的なお話しをさせていただきますが、親の介護問題というのはたしかに無視できるものではないでしょう。
一応、実子には介護義務がありますが、それはなにも身体的な介護だけでなく、経済的な介護も選択肢としてあります。
そのあたりについて、もう少し具体的に話し合ってもいいかもしれません。