彼のしんどさを共に背負えるか

あなたに(間接的ではありますが)失礼な物言いをしたその親族が、彼とどのような関係性なのかにもよって、この相談の答えは変わってきます。
親なのか、祖父母なのか、きょうだいなのか、彼のはとこの配偶者というものすごーく遠い存在なのか、関係性はよくわからないけれど葬式にはいつもいる人なのか……。そして、彼の親族の中にあなたの味方をしてくれて、結婚に反対の異を唱える親族を咎めてくれる人がいるのか、というのも重要になるでしょう。
たとえば、誰かの葬式でしか顔を合わせないレベルの遠縁の人が勝手に文句をつけているだけで、彼のご両親やきょうだいがあなたとの結婚を歓迎してくれているのであれば、わたしがあなたの立場なら迷わず結婚すると思います。人生で何度会うかわからない人間のために、自分の幸せを諦めたくはないですからね。
今後冠婚葬祭で顔を合わせる機会があれば、礼節を弁えた大人の対応をしてその場をやり過ごすでしょう。

ただ、その親族が親やきょうだいなど彼と近い関係性で、あなたの味方になってくれる人がいない孤立無援の場合。
これはなかなか厄介というか、難しい問題というか……。
仮に、結婚を反対しているのが彼の親だとさせてください。
できれば彼の両親から歓迎されたい、縁続きのままお互いの親族とも仲良くやりたい、多くの人から祝福をされて結婚したい、というのが理想ですよね。
別に彼の親と結婚するわけではありませんし、あくまでもあなたと彼の意志に基づいて結婚を進めていいはずなのですが、不安を抱かずにはいられない気持ちはよくわかります。
いくら「絶縁だ!」と息巻いたところで、現在の日本の法律では親と縁を切る手段はありません。連絡を無視したり、住民票の閲覧制限をかけたりすることはできてもその程度ではないでしょうか。

この件で彼はとても憤慨しているようですが、もしかしたらこれまで彼にとっては悪い人たちではなかった、それ以上にとても尊敬できる存在だったかもしれません。
それに、核家族化が進んでいると言われながらも、地域によっては家長制度が残っていたり、家業によっては長男であることを重要視していたり、結婚したら同居が鉄則なんて価値観を持っている世代の人もまだいるでしょう。
彼がどういった文化が根付いた地域・環境で、どういう風に育ってきたかは書かれていないためわかりかねますが、そういった観点からも縁を絶つことは容易ではない可能性があります。

親やきょうだいといった血縁者といえど、どうしても“合わない人”というのは存在します。
あくまでもわたしの考えですが、そういう場合は無理に付き合いを続ける必要はない、「親子なんだから話し合えばわかり合えるはず」と決めつけてくる人は無視していい、それらに支配されず自分の人生を歩んでいい、そう思っています。
でも、口では言えても実際に行動をうつすとなると簡単なことではないんですよね。
どうしたって囚われてしまいますし、苦しみも伴うでしょう。
彼の「縁を切る」という決断、それにつきまとう彼のしんどさを、あなたはこれから先共に背負っていくことができるか、というのはよく考えたほうがいいと思います。

あなたができること、彼ができること、ふたりでできること

もしかしたら、彼の親と交流をしているうちにあなたに対する誤解が解け、いい関係性が築けるかもしれません。
その可能性は決してゼロではありませんが、「いつかわかってもらえるかもしれない」と期待して、裏切られたときのショックは計り知れないでしょう。
「期待するな」とまでは言いませんが、ハナから言いがかりのようなことをしてくる相手に対しては「期待通りにならない可能性がある」という事実は、頭に入れておいてほしいと思います。
また、たとえ時間が経つにつれて関係性が改善されたとしても、あなたの中に禍根は残るでしょうしね。

相談文では、「いざとなれば縁を切る」と言う彼に対して、あなたは「心強い」と感じ、「自分に何かできることはあるか」と悩んでいますから、あなたは彼との結婚をやめる意志はない方向に気持ちが傾いているようです。
その前提でお話しを進めさせていただきます。
あなたにできることは、彼を背後から撃たないことだと思います。
彼の立場で考えてみると、今までよくしてくれて恩もある人たち、なまじ血縁者がそんなことを言うなんて! とショックを受ける中、その事実を飲み込み、縁を切るという選択はこれまでの価値観がガラリと変わることですから、精神的負担は避けられませんし相当な覚悟も必要とするでしょう。

たとえば、あなたを守るために「連絡を取らない」「礼儀を果たすために交流は冠婚葬祭のみ、ただし自分ひとりで出向く」「もし将来的に子供が生まれても会わせない」など彼が徹底的な対策を取ったのに、あなたが「結構時間も経ったし、今きちんと話せばわかってくれるかもしれない」「子供を合わせたら孫かわいさに懐柔できるかもしれない」と実際に行動にうつすのはもちろん、彼に働きかけたりするのはご法度。
他にも、結婚式を挙げる際に「ほんとうは両家揃って祝福されたかったのにそれが叶わないなんて……」と恨み言を言ったり、日常生活で「友達はみんな義理の実家にこんなによくしてもらってるのに、どうして我が家は……」とチクチク嫌味を言ったりするのも、してはいけないでしょう。
夫婦の足並みはそろっていないと破綻を招きかねませんし、彼の背後から撃てばあなたが彼にとっての敵になってしまいますから。

そして、彼は今回の件できちんと矢面に立ってくれる人なのか、結婚を決断する前に見定めておくことも必要ではないでしょうか。
あなたには「縁を切る」と口では言っておきながら、隠れて親族との交流を続けるような両方にいい顔をする人ではないか。そのうちにあなたへの悪口を耳にし過ぎて、まるで洗脳状態に陥る意志の弱さはないか。あなたの親御さんにきちんと事情を説明して筋を通す覚悟を持っているか、など。
現時点でそれをはっきりと確認するのは難しいかもしれませんが、冷静な目線で見て、少しでも「あれ?」と思う部分があれば、一度立ち止まってほしいと思います。
また、あなた自身もいざというときのために、いつでも自分の足で立てるようにしておくことをおすすめします。

もしも結婚するのであれば、あなたと彼の足並みはそろえる必要があり、そのためにお互いの気持ちはあらかじめ共有しておいたほうがいいと思います。
連絡の頻度や冠婚葬祭はどうするかなど親族との付き合い方、住む場所や連絡先など縁を切るための具体的な対策、万が一突撃されたときの対応、あなたの親への説明など、これらは結婚前にきちんと話し合っておくべき点です。
もちろん、状況は常に変わっていきますし、考え方にも変化があるでしょうから、その都度話し合いをし、共有を怠らないようにしてほしいと思います。
これは、先にお話しした「あなたが彼を背後から撃たない」ため、そして「彼が矢面に立ってあなたを守ってくれる人なのか」を見定めるために、核となる部分ではないでしょうか。