「成功の秘訣は?」「運がよかったから」

最後に、それぞれの物語の中で私の好きな登場人物について2通り紹介させてもらいたい。1つは、弟からの暴力に悩まされている姉のカン・ハニョン。私自身も(暴力は振るわれてないけど)弟と仲が悪いので、姉だから我慢しないといけなかったとか、自分の家の異常性に成長するまで気づけなかったとか、なんとなく思い当たる節が多い。同性同士の兄弟の仲があまり上手くいってないって話はたまに聞くけど、兄と妹、姉と弟など異性の兄弟の仲が悪い話ってあんまり遭遇したことがなく寂しかったので、ハニョンの物語には少し救われる部分があった。

もう1つは、白髪がふさふさしているため「シュークリーム教授」と学生たちから呼ばれているイ・ホ。ホ先生は、夫婦関係も円満、不動産投資も成功、仕事も若いときからずっと順調である。自分を驕ってしまってもおかしくないような恵まれた境遇の人だけど、「成功の秘訣は?」と聞かれたときに「運がよかった」としか答えない。そして自分の強運を社会に返すように、アフリカにボランティアに行ったり、低所得者が住む地域を訪問したりする。「今まで本当に多くを手に入れたから、失ってもかまわない」と、ホ先生は言う。こういう人ってきっと、欲がないから実社会にいてもあまり目立たないだろう。

なにしろ約50人いるので、「この人の生き方は素敵だな」「この人の境遇は自分と似ている」という人物が、1〜2人は見つかるはず。社会には本当に、いろいろな人がいる。私も決して「独身の代表」ってわけではないので、自分の経験から普遍的な法則を見つけようとしないこと、ほのぼの系の悪意なき発信にいちいち落ち込みすぎないこと、などを心に留めておきたい……。

Text/チェコ好き(和田真里奈)

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