ギャルが「キモい」を連呼するのはクリティカルヒットを避けるため

「あなたはなぜモテないのか。それは、あなたがキモチワルいからです」から始まる二村ヒトシさんの著書『すべてはモテるためである』。各所で評判を呼んだベストセラーゆえ読んだことがあるという方も多くいらっしゃるかと思います。

さて、わたしはこの本を読んで初めて、「人に『キモチワルい』って言わないほうがいいのか!」という、考えてみれば至極当然のことに気が付きました(笑)。なんせ、わたしが若い頃は「キモい」「きしょい」を連呼するのがギャルのトークのスタンダードでして、大人になったいまでも、そのトークスタイルを引きずったままのわたしは、いまだにひと一倍、「キモ!」「きしょ!」という言葉を頻繁に使っているのです。

どんな言葉使いをしたとて、誰に咎められる筋合いもないですが、確かに一度、考え直してみれば「キモチワルい」という言葉はあまり使いたい言葉でもありません。だって何かあるたびに「キモい」を連呼している女も、そこそこキモいじゃないですか。ゆえに、「キモチワルい」の封印を試みることにしたのです。

「キモチワルい」を封印してみると…

しかし、これまでの人生、「キモチワルい」というワードに頼りまくってきたせいもあり、ついつい何かの拍子に口から出てしまう。例えば先日は、電車に乗ろうと列に並んでいたところ、ドアが開いた瞬間に、サラリーマン風のスーツを着た男性が、「すみませ~ん! ちょっとちょっと、すみませ~ん!」なんて言いながら、人をかき分けて、いの一番に乗り込んでいく場面に遭遇しました。

一瞬、車内に忘れ物でもしたのかと思ったのですが、折り返し列車ではない。いったいどんな緊急事態かと注視していたところ、空いている座席にすっと腰を降ろしたので、思わず「わー、キモ!」と呟いてしまった。

「キモチワルいものはキモチワルいのだから、キモチワルいと言ったっていいじゃん! なんでこっちが配慮しないといけないのさ!」と破れかぶれの気持ちと、「キモチワルいという言葉は、美しくないから、使いたくない」という思いとに切り裂かれる日々。「キモチワルい」という言葉を使わない人は、いったいどうやって、そういった感情を表しているのか。というわけで、わたしが「キモチワルい」と蔑する人に対して、みなが何と言っているのかと思い返すと、「不潔」「挙動が不審」「怖い」……なるほど、「キモチワルい」よりも具体性がある。