「男だけの世界」にさわやかに現れる女たち

連載第一回でかつては女性監督がほとんどいなかった、今もまだまだ少ないという話を書きましたが、その数少ないうちの一人に80年代後半から活躍したペニー・マーシャルがいます。

元々は俳優としてキャリアをスタートしており、監督した本数も決して多くはありませんが、『プリティ・ウーマン』を撮った兄のゲイリー・マーシャルと共に時代を超える傑作を残しました。

『プリティ・リーグ』は大戦時の実話を基にした一本で、戦場へ行ってしまった男たちの代わりに結成された女子プロ野球リーグのドラマ。

各地でアマチュア野球をプレーしていた女性たちが寄せ集められチームとしてまとまっていくさまは、『ピッチ・パーフェクト』とも通じるところがあるかも。そこに主役姉妹の葛藤と対立、戦争を背景にした人々の暮らし、そして多くのことが「男性だけのもの」と思われていた時代に女たちがやってのけたことを清々しく描いています。

女たちは野球選手なのにミニのユニフォームを着せられ青あざ・擦り傷だらけ、さらにプレーとは関係ないのにマナー教室に通わされるなど、見栄えのいいアイドル的な振る舞いを求められます。

それでも心底好きな野球をプロとして続けるために身を粉にして働く彼女たちに、最初は野次を飛ばしていた観客もすっかり夢中に。「なぜ俺が女子チームなんか!」と腐っていた酒びたりの監督も指導に精を出すようになっていく。

初めて観たときから私の心に残っているのがバスで移動中、粗野なドリスが恋人について語るシーンです。

お世辞にもハンサムとは言えない男性の写真を見せられたチームメイトが「大事なのは顔じゃないわよね」と言うと「そいつ馬鹿だし職なしだし、あたしのこともひどい扱いだよ」と返します。

「じゃあなんでそんな男がいいの?」

「だって…他の男はあたしのこと何かおかしい、イカレた女だって思ってる。それか女じゃないってね。

あたしが野球なんかするから。

自分でもそう思ってた、でも今は違う。だってこんなに仲間がいるし、だれもおかしくない。でしょ?」

そしてドリスはそのまま恋人の写真を破いてバスの窓から捨ててしまうのです。

どんなにタフな人間でも、ひとりでは見られない景色がある。

何気なくさらっと描かれているのですが、大人になって観ると昔以上に胸に迫るものがあります。

女同士は味方にもなるけど敵にもなる。ときどきめんどくさいしお互い変わることもある。

それでも一度本当に強く結ばれたら、赤い糸より丈夫になれる 。

そんなシスターフッド映画を観ながら、たまには大事な女性と夜通し語り合えたらもっと最高ですね。

TEXT/気絶ちゃん
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