「30歳になったら終わり」という漠然とした焦りと戦ってました/まんしゅうきつこインタビュー(前編)

ブログ『オリモノわんだーらんど』が一躍ネットで話題となり、先日、待望の初単行本を2冊同時刊行した漫画家のまんしゅうきつこさん。
“30歳・処女・実家暮らし”の女性の日常を描いた『ハルモヤさん』と、自身のアルコール依存症体験を綴った『アル中ワンダーランド』、そして自身のアラサー時代を振り返りながら、おひとりさま女性へのエールと生きるヒントをうかがいました。

「今日も1日寝ちゃった」という人を安心させたい

インタビューに答えるまんしゅうきつこさんの画像

――アラサーの独身女性を描いた漫画はこれまでにも数多くありましたが、『ハルモヤさん』はその要素にプラスして、実家暮らしの気楽さと閉塞感が描かれているのが新しいですね。

まんしゅう
もともとは、『男子高校生の日常』のアラサー女子版みたいなのが描きたくて。
『ゴーゴーバンチ』で連載が始まった2年前は、ちょうど世間に“アラサー女子漫画ブーム”みたいな流れがきていたんですよね。
でも、今やすっかり下火になってしまったので、“実家暮らし”を押していこうということになりました(笑)。帯のキャッチコピーも、最初の案は「こりゃたまんねえな、実家暮らし」だったんです。

――親の干渉をうっとうしいと思いながら、自立できずにぬくぬくと実家に依存している感じがリアルで、思い当たる人も多いと思います。
つらいことがあると寝てやりすごしてしまう主人公の春靄(はるもや)きの子が、「何かを頑張ろうとするとすぐ眠くなっちゃうの!」と叫ぶシーンには、超共感しました(笑)。

まんしゅう
でしょ? 何かしなくちゃと思いながらも、結局今日も1日寝ちゃったよ……みたいなことって、よくあると思うんですよ。
むしろ、世の中の大半の人はそうじゃないかと思っていて。だから、そういう人が読んで「私だけじゃないんだ」と気持ちが楽になってくれたらいいな、と思いながら描いてます。
まんしゅうきつこ『ハルモヤさん』書影 『ハルモヤさん』(新潮社 BUNCH COMICS)

――「わたしの人生、まだ本番が始まってないだけ」「いつまで経っても大人になりきれない、おばさんコドモ」というキャッチコピーも秀逸ですよね。

まんしゅう
それは、担当編集のCさんが考えてくれたんですけどね(笑)。でも、“おばさんコドモ”っていうフレーズは、私が気に入ってよく言っていたんだっけな。
最初は『デスパレートな妻たち』のまんしゅう版にしようって話していて、8人くらいいろんな女の子が出てくる話を考えていたんですけど、最終的にはきの子だけをフィーチャーする今の形になりました。

――きの子のキャラクターは、ご自分がモデルになっていたりするんですか?

まんしゅう
もちろん多少は実体験がないと描けないですけど、『ハルモヤさん』に関しては、ほぼ創作です。
まあ、第1話に出てくる「高崎線ルサンチマン(東京から高崎線に乗って埼玉に通学してくる同級生に対する“憧れ”と“都落ちした気の毒な人たち”というアンビバレンスな感情のこと)」とかには、実感もこもってますけどね(笑)。