「あー、久しぶりに生きている感じがする…」という言葉が胸に刺さりまくる
そんなある日、あれは2014年6月1日のこと。イケダハヤト氏が「高知県に移住します」とツイートし、同時にブログのタイトルを「イケハヤ書店」から「まだ東京で消耗してるの?」に変更。突然の地方移住宣言&中央ディスに、ネットは賛否両論が巻き起こり大炎上。
しかし、東京から飛び出すきっかけをどこかで待っていた私は、リアルタイムの地方移住者の出現にどきどきしながら、その成り行きを見守っていました。何より、氏が移住を発表した記事に添えていた「あー、久しぶりに生きている感じがする…」という言葉が、生きる心地がしない毎日を送る心に刺さりまくっていたのです。
その後もイケハヤ氏は連日「カツオがうまい」、「トマトがうまい」と高知ではしゃぎます。さらに抜かりなく「まだ東京で消耗してるの?」と東京在住者の神経を逆撫でしながらも、移住の支援策やお試し移住のための格安で借りられる物件情報などもキッチリ紹介してくれる。表現の仕方がツンデレすぎる…!
そうして知った高知の物件は、東京と比べたらウソみたいにお得な家賃。
「やっぱり、東京の家賃の高さは異常なんだ…。もし家賃をそれぐらい抑えられたら、もっとゆったり生活を楽しめるかも?」、「でも、いくらフリーとはいえお世話になってる会社や人はみんな東京にいるわけだし…」、「縁もゆかりもない場所に移住なんてできないよな…彼氏とかと一緒ならまだしも、一人で知らない土地に行くなんてハードルが高すぎる…」悶々は最高潮に達しつつ、イケハヤブログを欠かさずチェックする日々が続きます。
東京はワクワクしないことに対して支払う対価が高すぎる
そんななか、イケハヤ氏が東京に凱旋し、移住について講演するという知らせをネットで見つけた私は、速攻前のめりで申し込みボタンを連打&連打。
当日の講演終了後に「自然があるところへの移住、いいなぁって思います。でも仕事の都合もあるし…」とグダグダな私に、「えっフリーのライター? いますぐ移住すればいいじゃないですか。むしろ何でしないんですか? 高知は最高ですよ。はっはっは」とイケハヤ氏はあくまでヴァイブス軽め。あれっもしかして、移住って私が思ってるより簡単なの…?
このイベントが行われたのは2014年6月の終わり。当時住んでいた下北沢の部屋の更新時期は7月末。高い家賃に加えて、更新料を払ってまで同じ環境に住みたいか、と問われれば答えはノー。じゃあまた新たに高い敷金・礼金を払って、東京のどこか別の場所に住むの? と問われれば、それもまた心が踊りません。
どっちもイヤだ。ワクワクしないことに対して支払う対価が高過ぎる。ならば第三の道をいくしかない。
私は新しい部屋のメドがまったくつかないまま、部屋の管理会社に電話をかけると、賃貸契約を更新せず、7月末で退去する旨を伝えました。「来月からはホームレス」という言葉がちらりと頭をかすめるなか、まだ見ぬしあわせな居場所を探すべく、まずは四国に向かいました。
(続く)
Text/ 小野好美
※2015年10月26日に「SOLO」で掲載しました
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