「日本にはひとりじゃダメだと思わせる物語があふれている」湯山女子校開校!

第1回:結婚のメリットを問い直す!
「なぜ、結婚したいの? 結婚しないと何がマズいの」

SOLOイベントレポ
「湯山女子校~女ひとり寿司ですが、それが何か?」講義抜粋
「おひとりさまは、損か得か」“女問答”レポ

“おひとりさま”としての自分を肯定しようとしても、「結婚しろ、子どもを産め」という世間からのプレッシャーは大きいもの。この状況に対し「日本には、ひとりじゃダメだと思わせる物語があふれている」と看破するのは著述家・湯山玲子さんです。
著作『文化系女子という生き方「ポスト恋愛時代宣言」!』や新刊『男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋』で、“非リアとリア充”や “男と女”など、越境的に対象を捉えながら、議論を展開する湯山さん。
その女性限定の連続講座が、2015年2月から3月にかけて下北沢B&Bで開講されました。女性誌の編集会議のごとき濃密な授業内容のごく一部をSOLO編集部がリポートします!

未婚で大充実なのに結婚に後ろ髪をひかれるのはなぜ?

湯山玲子
湯山玲子さん(以下、敬称略)

この講座のテーマは、「“おひとりさま”で生きることは損か、得か」ということ。もっと言うと、女性が「ひとりで美味しい寿司を、気の向くままに自分のお金で食べに行く」というようなささやかな生きる喜びを、女性自ら否定してしまう――。そんな昨今の傾向について、徹底的に考えていきたいのね。

 私の著書には飲み会の話題がよく出てくるけど、本のネタは飲み屋でしか拾ってないと言っていいほど(笑)。
そのように私の発想の仕方は「対話型」ですので、今回はゼミ形式で皆さんと議論をしながら答えを探っていきたいと思います。よろしくどうぞ!

一同:よろしくお願いします!

湯山

おひとりさま周りの結婚や仕事などを扱うことになりますが、私は人間の欲求、行動には「性」という下部構造が関係しているという考え。
それを前提に話すことに対して、皆さんそれぞれ同調や反発の気持ちが湧くと思う。
その心の動きそのものが、各個人の問題意識に対する回答の一つになるかと思うので、早口だけど付いてきてね。
まずは紙を配るので、議題にしてほしいトピックを書いてもらえますか?

女性のギスギス感は結婚というよりオナニーの問題である

【議題】参加者のAさん

アラサーですが仕事は充実していて、今は結婚や出産に対してまったく興味が持てません。
このままだと、おひとりさまの人生をおくる可能性が高いと思います。ただ、そのことを50歳になった自分が後悔しないかどうかというと自信がありません。
出産のリミットを考えると「結婚するか、しないか」今決めなくてはいけないものかと悩ましいです。

湯山

いきなり核心の問題が来ちゃいました。女性には産む適齢期というものがあるけれど、それが仕事のキャリアとしてちょうど正式運転しだしたときに来て、思ったよりも早いんだよね。30歳なんて感覚的にはやっと成人式を迎えたぐらいのものじゃないですか。
まずは子どもを産んでも仕事を続けられるかということがあると思う。産休・育休などの福利厚生の制度は整っているの?

Aさん

うちの会社は整っていないですね。

湯山

恵まれた一部の大企業だけが整っているという感じだよね。その制度にしたってコンプライアンスの観点から建前としては充実しているけれど、男社会かつ競争社会である現実を前に中身はスカスカな場合も多い。

 たとえば17時に子どものお迎えで帰ったときに、「あのとき会議にいなかったからしょうがないよね」といった言われ方で、自分が守りたい仕事がほかの人に取って代わられてしまうような怖さがある。
働きながら子どもを産むと決めたら、親でも、遠い縁でも、仲の良い知人でも、子育てのネットワークを自分で作っていくような覚悟が求められる状況です。

一同:う~ん。

湯山

そんなのどだい無理な話だよね。友達ふたりぐらいの関係でも苦労しているのに、子育てのためだからって、いきなり知り合い、または、かつての時代のようにご近所の人を頼ったりできるものだろうか。
ただ、そう考えていくと私たちには「人に迷惑をかけるな」という呪縛が相当強く刷り込まれていることに気づかされます。

 結論ありきにはしていないんだけど、この講義では「人に迷惑をかけて生きよう」ってことは何度でも伝えていきたい。
だって、その呪縛はこんな好き放題やっていそうな私にだってあるのですよ。

一同:(笑)。

湯山

では、迷惑をかけてしまう場合、子育てのヘルプとしてね。その迷惑料は、おカネで解決となるわけです。
果たして、これも、某タレントの発言が炎上したように「ベビーシッターを雇って、夫婦で外食に行く」的なことにも、批判の矢が飛んでくる。
まあ、そんな生活ができるような高収入への嫉妬なのでしょうけれど。

 みんな「人さまに迷惑をかけて生きるな」とずっと言われて育ってきているから、何かあったときはいつも自問自答です。
その考え方を守ってしまうと、結果、いつも人の顔を伺って生きるようになり、逆にそのルールを守っていない人に、腹を立ててばかりの人生になる。
そうやって生きていくのは、非常にツラい。そういう意味では、子どもを産もうが、おひとりさまでいこうが、この呪縛に縛られている限りはどちらにしたって生きていくのは大変かもね。

 話を元に戻すと、Aさんは今、個人的には、結婚も出産も全く興味がなくて仕事に充実を感じていて、おひとりさまでいいと思っている。
だとしたらもうそのまま行っちゃっていいんじゃない? ためらってしまうような実体験があるの?

Aさん

仕事をしていて、子どもがいる女性の先輩の方が楽しそうだったり、仕事のやり方も魅力的に思えたりすることがあるんです。
どうにもならないこともあると知っているというか。反対に独身女性の先輩は怖いと感じることも多くて……。