どうしてこれが『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』なのか

切ない話、奇妙な話、悲劇、喜劇、情けない話、幸せな話……『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』には、多種多様な物語が集まっている。しかし、なぜこのような小さな物語の集積が、またこれらの物語がもたらした出会いが、「自分たちが何者であって、何を標榜していて、何を信じているか」を考えるきっかけになるのだろう。

私も例外ではないが、日本人は「ナショナル」に強い抵抗を持っている人が少なくない。そのため、「アメリカという国を考え直す」と「日本という国を考え直す」では、少し意味合いが異なってくる。オースターと同じ手法では、私たちは「日本という国を考え直す」ことはできないと思う。ただ、誰かの小さな物語にたくさん触れることによって、少なくとも、「自分」を見つめることはできる。自分が何に心を動かされるのか、何を美しいと思うのか。『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』を読んだら、この本に混ぜてほしい自分の物語を、ぜひ考えてみてほしい。

卒業したとか、入社したとか、結婚したとか、出産したとか、離婚したとか、私たちはつい人生のハイライトに目が向かいがちだ。でも本当の人生は、こういった小さな物語の積み重ねである。ほんと、体力がなくても読めるので、疲れている人は『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』をパラパラめくりながら、もう少し踏ん張ってほしい。

初の書籍化!

チェコ好き(和田 真里奈) さんの連載が書籍化されました!
『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはすです。