『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んで。大切な人にも伝えたい「それは違うと思うよ」

夜のお仕事をかじっていた一時期、「最近はなんでもすぐセクハラって言われちゃうからさあ」とステレオタイプな愚痴を吐くおっさんに出くわした。
フフフと笑い流すべきだったのかもしれないが、私は「そうですね! 時代は良い方向に向かっているということです」とハキハキ答えてしまったので、あとからママに裏へ呼び出され、こっぴどく怒られた。

商売なんだからいったん自分の思想は捨てるべき、どうせ酔っ払いなんだから相手にするな。

まあママの言い分もわからないではない。でもその後も私はママに隠れてこういう発言をし続けたし、よく会話を聞くと他の女の子も、本当に嫌なときは「不快です」「その言い方はどうなんですか?」とけっこうはっきり伝えていた。水商売といえど、昨今の女性たちはなかなか逞しい。

キム・ジヨン感想 Daniel Spase

面倒くさいのはオジサンだけではない!?

こんなふうに、まだまだ旧社会の考え方から抜け出せていない男性が少なくない中、お隣の韓国でベストセラーになっているのが『82年生まれ、キム・ジヨン』である。
1982年に、韓国のごく一般的な家庭に生まれた女性キム・ジヨン。学校で、進学で、就職で、結婚で、出産で、様々な性差別を経験しながら彼女は懸命に生きていく。
「日本はここまでひどくないよ」とつい言いたくなる描写もあるけれど、ここに描かれているもののうち、1つや2つくらい身に覚えがある日本女性も多いはずだ。
どこかで聞いたような話、どこかで見たような話。ネットの反応なども含めて、韓国と日本の環境は非常に似た部分があるといえる。

ところで「旧社会の考え方から抜け出せていない男性」は、何も夜のお店にやってくるオジサンだけではない。私たちにとって身近な、恋人、家族(父・夫)、男友達も、「あ、そういうこと言っちゃう!?」という差別的な言動をしていることがないだろうか。私自身は、一度二度ならず覚えがある。

相手が好きでもなんでもないオジサンならズケズケと言えることでも、こういった大切な人が相手だと、人間関係にヒビを入れたくない、嫌われたくない、煙たい女だと思われたくない……と心の防御機能が働いて、私は彼らの発言を笑って流してしまったことが何度もあった。

でも最近、やっぱりこれではダメだと思うようになったのだ。
大切な人だから言えないんじゃない。大切な人だからこそ、言うべきことは言わなきゃいけないんじゃないか。