「結婚したいなら現実を見ろ」?──いえ、現実は見るのではなく変えるんですよ

気づかいや女子力を求められる世界を変えたい女性の画像by Anderson Miranda

先日、美容院にて女性ファッション誌を読んでいたら、少々辟易してしまった。
メイクやファッションのページは恋人や夫のために着飾らなければいけないように書かれていて、あるページには結婚式を挙げたばかりの幸せな夫婦のインタビューが載っていて、極め付けは「30代の婚活」なる特集が「甘い考えは捨てろ」と煽ってくる。
まあ、私だって正直なところ女子会よりは男と会う日のほうが身だしなみに力が入るし、結婚したければ自然な出会いなんて期待するな、マッチングアプリでも何でも駆使して貪欲に行け、というアドバイスが間違いだとは思わない。でもそれにしたって、この世界観の中で生きるのはあまりにも辛いな……と思ってしまった。具体的な何かが決定的に間違っているわけじゃないんだけど、全体の「空気」がもう、重い。

AMは、恋愛で女性が主体性を持ち、たとえ世間一般で支持される生き方からは外れても、個人の価値観と決断を尊重する真面目なメディアだと私は思っている(エロいけど)。だけど、おそらく日本の多くの女性はまだ、そこまでリベラルな思想には至っていない。男性に認められなければ、恋愛しなければ、結婚しなければ半人前だ。美容院でファッション誌をめくりながら、私は何とも歯がゆい思いに駆られてしまった。

気が利かない人間の居心地の悪さ

映画化もした綿矢りさ『勝手にふるえてろ』の主人公・良香は26歳、まだ男性と交際したことがない恋愛経験ゼロの女性で、処女であることを気にしている。
中学時代の同級生「イチ」に10年以上片思いをしており、ときに突飛な行動が目立ち、激しい妄想癖がある。親近感はわくが、もし身の回りにいたら、ちょっと一線を引いてお付き合いしたい人物だ。ただ、良香がこんなふうに処女であることに負い目を感じたり被害妄想が激しかったりするのは、彼女自身の気質ももちろんあるけれど、世間がいらん風潮を押し付けているからでもある気がする。小説の中から、私がめちゃくちゃ共感したある場面を引用しよう。

「平田さんと木村くんの同僚の女の人はよく動いていて、かいがいしくご飯をよそったり、冷えた缶ビールをまめに台所から取ってきたりで、木村くんと同僚の男の人は鷹揚にお礼を言ったりしてすっかりうれしそうで、でも私はあからさまな気がして全然動けなくて、腰の重い、ご飯ができるのをぼうっと待っている親の手伝いをしない子どもの役しかできなかった。(中略)でも女の世界というのは複雑で、私も手伝うと言ってあとから立ち上がっても、自分が輝けるかつ手持ちぶさたにならない役割を取られたくない女の子たちは笑顔で、いいよ座ってて〜と言うだけで決して自分のポジションを譲ろうとはしない。」

わ、わかる。私もいわゆる「気が利かない」人間なので、悪気はないのだけどいつも集団の中で一歩遅れがちになるタイプだ。私の周囲の女性はそんなに意地悪ではないので「いいよ座ってて〜」とは言わないし、男性も鷹揚にお礼を言うだけでなくわりと自分自身が動いている。しかしこの場面に、妙な既視感を覚えたのは事実だ。