5:5の割合で話せているか?

 多くの人は、「最近あった面白いこと」などいちいち気に留めていない。だからそんなことはストレートに聞かず、会話の中からその人の感情が大きく動いた部分を察知し、相手の「話したいこと」「ツボ」を探っていく。本当に会話の上手い人は、おそらくそういうことをやっているのだろう。

 鴻上尚史さんの著書『コミュニケィションのレッスン』には、「コミュニケイションをうまくなろうとするあなたは 、面白い話をしようと苦しむのではなく、相手に話してもらうのです。だって、相手は話すことを望んでいるんですから」という一文がある。これは確かにそうで、人は基本的に自分のことを話したい生き物だ。

 だけど、私の会話スキルが低いせいか、その「話したいこと」がなかなか探れず、わかりづらい人がたまにいる。「最近何か面白いことありました?」はさすがに無茶振りでも、他のいろいろな質問を投げかけて探ってみても、どうもツボが見えてこない、という人だ。

 コミュニケーションが上手い人とは、面白い話ができる人ではなく、相手の話を聞くのが上手い人である。だけど、私のように「聞くスキル」があまりない人は、反対の立場から考えて、せめて「聞き役に探ってもらいやすいスキル」を身につけておいても、いいんじゃないかと思ったのだ。
「聞き役に探ってもらいやすいスキル」とは、すなわち「最近何か面白いことありました?」などの質問に、たどたどしくはあっても答えられるスキルである。
やっぱり理想は、どちらか一方が話しすぎるのではない、話す割合がちょうど5:5になるような会話なのだから。