装飾やゲーム機にモダンなセンスを感じる「ウーラス」
今年の東京は珍しく雨に降られず、比較的長い間、満開の桜を楽しめたのではないでしょうか? 肌寒くはありましたが、天気も良く、お花見をされた方も多かったことと思います。皆さまはどのように過ごされましたでしょうか?
私は宮城県仙台市にお邪魔しておりました。今年秋に発売を予定している新刊の取材を兼ねて色々なところに足を伸ばし、いつもより少しのんびりとした二日間を送っていました。
あらかじめ約束をしていたお店の他にも何軒か訪問し、それぞれとても興味深いお話を伺うことができたのですが、今回はその中の一つ、「ウーラス」について綴ります。
お店は、勾当台公園駅から徒歩数分。近くには県庁や区役所があるのですが、お休みとなる週末はとても静かな街でした。
青いひさしが目印の「ウーラス」は、外からだと店内の様子をあまり伺えないのですが、ガラスのドアに貼られた手書きの「営業中」の貼り紙を見つけるとほっとします。中へ入ると、左側には長いカウンター席、右側には植えられた木々のおかげで目隠しとなっているテーブル席。大きなガラス窓から光が差し込むので、とても過ごしやすいのです。
注文したウィンナーコーヒーを持ってきて下さったマスターに「写真を撮らせて頂いてもよろしいでしょうか?」と声を掛けたことから今回のご縁は生まれました。
「せっかくだから奥の席も撮るといいよ。電気を点けてあげるから。今では珍しくなったゲーム台がたくさんあるよ」と案内されるままに奥へ進むと、そこにはまるで時間の止まったような空間が存在していました。壁には昔の東京・京橋を描いた油絵や色褪せたイチゴのケーキの写真が飾られ、クリーム色の椅子は年月を経た趣ある素敵なデザインです。
電源を入れてもらったゲーム機には当時を彷彿とさせるイラストや文字たちが浮き上がります。今もなおゲームを楽しむ人たちがいらっしゃるそうですが、その頃を知らない私でもどこかモダンな空気を感じられるのは、部屋全体が穏やかな光で包まれていたからかもしれません。
このお店ができた当時のこと、店名の由来、珈琲の飲み方の面白さ、豆へのこだわり、カウンターの壁がイタリア製であること、実は焼肉屋も経営していてランチは特にお得だということ……数時間にわたって貴重なお話を聞かせて下さいました(詳細については、秋に発売する書籍で綴るつもりなのでそちらをご覧頂けましたら嬉しいです)。
「純喫茶にお邪魔する面白さ」にいつも心が惹かれてしまうのは、こんな風にちょっとした会話やタイミングがこの先ずっと続く縁になるかもしれないところです。純喫茶だけでなく、全ての出会いがそうなのかもしれませんが。
今週土曜日、4月13日は「喫茶店の日」ですね。明治21年(1888年)4月13日、東京・上野に日本初の喫茶店「可否茶館(かひいさかん)」の開業したことが由来と言われています。
「喫茶店の日」の13日は、ずっと行ってみたかったお店に出掛けたり、近所にあるお店の魅力を再確認しに足を運ぶのはいかがでしょうか? お忙しい日々をお過ごしとは思いますが、どうにか用事をやり繰りして、ほんの30分、純喫茶でのんびりと過ごしてみてください。いつもと違うひとときを味わうことで生まれる発想や新しい視点に出会えると思います。
遠くでも近くでも、1人でも誰かと一緒でも。こちらをご覧下さった皆さまの喫茶時間が素敵なものでありますように。
Text/難波里奈
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