すぐアウトプット、すぐ評価されたい。現代人の「思いついたらすぐ言っちゃう病」

つぶやけばすぐ反応が返ってくる現代だからこそ、一人で温め続ける思いがあれば尊い。

褒められたら嬉しい。でも必ずしも評価される訳じゃない

何かを待つようにして頬杖をつきひとり考える女性の写真by Kyle Broad

 突然なんだという話ですが、人に褒められると嬉しいですか? もちろん嬉しいですよね。私もすごく嬉しいです。程度の差こそあるものの、人に褒められて嬉しくない人はなかなかいないと思います。

 人間が仕事をする主な理由は生活費を稼ぐためだけれど、社会やまわりの人と関わる中で承認を得たいからというのもある。一生働かなくてもいいほどの大金を手に入れたとしても、2~3年ふらふら遊んだらだんだん飽きて退屈になってきて、猛烈に何かがやりたくなったりするんだと思います。

 褒められたら嬉しいし、やる気も出る。それは誰だってそうだし、悪いことではないです。でも、自分の行いが常に他人に評価されるかといったら、残念ながらそうとは限りません。評価してほしいところで評価してもらえなかったり、逆に「え、そこ?」という部分で褒めてもらったり。
他人のことは自分でコントロールできないから、「他の人からの承認」に自分のモチベーションをすべて依存してしまうと、浮き沈みが激しくて情緒不安定になってしまいます。

現代に生きる私たちの「思いついたことすぐ言っちゃう病」

 先日、クリストファー・ノーラン監督の新作『ダンケルク』を映画館で観てきたんです。第二次世界大戦中のダンケルク海岸における、英仏連合軍の撤退作戦を描いた作品です。

 いろいろなインタビューによると、『ダンケルク』の構想のきっかけとなった体験は25年も前。友人と、小さな船に乗ってドーバー海峡を19時間かけて渡ったそうなんですが、その体験がものすごくキツくて印象に残っていたらしい。
いつか映画にしたいとは思っていたものの、25年前のその時点では、自分の映画監督としての技術に自信がなかった。だから、今回になってやっとそれが実現したわけですが、25年もの間、ノーラン監督は他の作品を製作しつつ、構想を温め続けてきたということですね。

 ノーラン監督は、ゴシップや興味のないニュースに時間を奪われるのが嫌なので、スマホをあまり使わないんだそうです。ということはおそらく、SNSも積極的には見ていないのでしょう。

 でも、もしノーラン監督がドーバー海峡を渡ったのが今で、しかも彼がTwitterをやっていたら……「ドーバー海峡めっちゃ荒れててワロタ」「まじでキツい」「最高にキツいので映画化しようと思う」とか、すぐ言っちゃうと思うんですよね。そして、それがたくさん「いいね!」されるなりリツイートされるなりして、すぐに実現しちゃう。もしくは、あまり反応がなくて、「あ……もしかして、ドーバー海峡がキツい話、つまんない?」と思って、その時点で諦めちゃう。これって、どちらもすごくもったいないと思うんです。

 前者のように、話が早くていいという考えもあるかもしれない。だけど、「自分の中で期が熟すのを待つ」「技術がそこまで到達するのを待つ」ということを、現代の私たちはなかなかできなくなっていると感じるんです。「思いついたことすぐ言っちゃう病」です。すぐにアウトプットしたい、すぐに評価されたい。そしてそれこそが最善であるという風潮ができています。

 だけど、出来上がった『ダンケルク』を観ると、ノーラン監督があまりスマホを使わない人で良かった、25年前にTwitterがなくてよかったと、きっと多くの人が思うはず。
『ダンケルク』は、ノーラン監督が今の技術で、今のタイミングで製作したからこその作品であると、私は思ったんです。