関係が悪化している韓国に行ったら
先週末、韓国に行ってきた。国同士の関係も悪い。暴行を受けた人もいる。おまけに、信じられないほどに大きな台風が韓国にも日本にも差し迫っている。では、なぜこんな状況のなか私は韓国へと向かったのかというと、敬愛するThe1975というマンチェスター出身のバンドのライブを見たいがためだった。
今年の春に発表されたアジアツアーには、なぜか「TOKYO」の5文字がない。サマーソニックへの出演が発表されてはいたけれど、たかが1時間のショーで私は満足することができるのだろうか……? 2時間ですぐに行けるような国でライブをするというのに……? そういえば、ソウルへ行くのは10年ぶりくらいになる。え? もう10年も経ったのか……などと考えているうちに、気が付けばソウル行きの航空券とライブチケットの手配が済んでいた。
確か、この時はカリフォルニアで行われているコーチェラという音楽フェスの配信を見終えた後で、素晴らしいライブを見たてほやほやの高すぎるテンションのまま、韓国行きを決めてしまったのだったっけ。
今思えば、数カ月しか経っていない時期に、まさかこんなに関係性が悪化するだなんて考えてもみなかった。しかし、私の「どうせ満足できないだろう」という予感は見事に的中し、早々に韓国行きを決めておいてよかった……と後になってしみじみと思うのだった。
ドキドキしながら会場へと向かった当日は、本当にいい景色を見られたように思う。もちろん、ライブはすごくよかった。本当によかった。聴きたかった曲を聴くこともできたし、新しい発見もあった。サマーソニックで感じた空気感とはまったく違う。ステージに立つマシュー・ヒーリーを食い入るように見入った。私は、このバンドがとにかく大好きなのだということを改めて知った。
しかしそれ以上に、韓国で好きなバンドを見るということに大きな価値があったように思う。言葉も文化も違う。隣の国なのに、宗教も考え方も違う。国同士の関係性もここ近年で最悪と言ってもいいかもしれない。けれど、同じバンドを好きな気持ちも盛り上がり方も、日本とまったく変わらなかった。同じように不慣れな英語の歌詞を歌い、手を挙げ、飛び跳ねる。その光景を目の前にして、一層の感動を覚えてしまった。たくさんの韓国人と、同じ体験をすることに大きな意味があったのだ。
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