特別な日だからこそ、自分が一番いいと思える体験を

私の人生の中で、最もいい誕生日を過ごせたのは、モロッコのサハラ砂漠で星空を観に行った時だった。あれはよかった。日中50℃近くになる、砂以外は何もない砂漠をラクダに揺られながら進んでいく。それだけで異世界を歩いている気持ちだった。
ラクダに乗り過ぎて、内股が筋肉痛になることなんて滅多にないと思う。暑さで殺されそうにはなったことも、オレンジっぽい砂と青い空というシンプルな構成でできた景色も、砂の上に布団を敷いて星を見ながら眠ったことも、恐らく絶対に忘れないし、何かあった時にふと思い出して「また頑張ろう」という気持ちになるんだろう。

そうそう。そうだよ! そういうことだよ! 体も心もパーフェクトに満たされるような経験を、一年に一度の特別な日にしたい。誰かが一緒にいるから、なんとなく楽しかったとかじゃなくて。お祝いの日だから、ただケーキを食べてみるとかじゃなくて。

自分が一番楽しかったと思えるような日を、ちゃんとコーディネートしたい。でも、社会人になってしまった今、時間にも制限があるからそう簡単に飛行機に乗る訳にはいかないし、自分に興味があることも限られている。
他の人はどんな風に誕生日を過ごしているのだろうか? 誰かと一緒にいることも、一人でなんとなく過ごすことも憂鬱に思えてしまう、年に一度の特別な日を。

来年の9/3は月曜日。有給を取って旅行に行くか、それとも日本でまたアホらしいことに挑戦するのか。多分、今年と同じように悩んで、なんだかんだ何もしない誕生日になってしまう気がする。
ただ生まれた日ってだけなのに、これからもこの悩みや心が少し沈んでいくような気持ちを抱えていくのかと思うと、ちょっとだけ気が重い。

Text/あたそ

※2017年9月12日に「SOLO」で掲載しました