完璧なんて目指すのやめようよ

二十代の時には想像もしていなかった精神性である。若い頃は、とにかく完璧に近づきたかった。欠点をどんどん捨てて、その分良いところを増やそうと躍起になっていた、いいえ、躍起になろうとしていたあの頃。大変だったねと思うし、まぁそれもそれで偉かったねと思う。ありがとうねとも。おかげで失えたいくつかの欠点に未練はない。ないからこそ、生き残ってしまった欠点が愛しいのだ。その欠点は、失いようがない私自身であるわけだもの。腐れ縁みたいなものだ。一緒に生きていくしかないのだ。だけどやっぱり恥ずかしいから隠す。隠す、という行為に宿る罪悪感を興奮に変えてしまう私の頭はもしかして少し変だけど、誰にでも少し変な頭が乗っかっているものでしょう? そうじゃないと生きていけないくらい、この世は歪だ。

だから、もう、皆さん。完璧なんて目指すのやめましょうよ。完璧なんて全然興奮しませんよ。
完璧は、乾いている。化石のようなもの。つまり完璧は過去で、だから現在にいる私たちに似合うものではない気がします。毎日いっぱいおしっこを出して、寝汗までかいてしまうほど水分まみれの私たちは、完璧になりようがないのだ。生きているんだから仕方がない。たぷんとしていて恥ずかしいなと思う二の腕を、細くできたら優秀な人生だけど。たぷんとしたまま歩いてしまうのもまた良し。恥ずかしいなと自分を隠すあなたの強張った指先で、誰かが恋に落ちたりするものなのです。みなさん良い夏を!

Text/長井短