大切なことは健康とそれなりのお金と適切な人間関係

1985年制定の男女雇用機会均等法から女性も働ける社会になって、最近は婚姻件数も低下している。2020年の段階で女性の生涯未婚率は約18%で、2023年の出生率は1.20で過去最低だったそうだ。歴史や数字から振り返っても、「結婚して子どもを産んで家庭を持つことが女性の幸せ」という概念から社会が離れ、さまざまな選択肢のなかから自分で幸せを見つけ出せる世の中になりつつあると思う。

これは私が東京に身を置いて生活していることに大きく関係しているのだろうが、「結婚しなければ一人前になれない」「子どもがいないと女失格」という風潮が消えつつある。少なくとも、私の人生に指図してくる奴は周りに誰ひとりとして存在しない。

まだ足りない部分もありすぎるくらいだけど、それくらい自由な世の中になりつつある。そのなかで、本当にロールモデルが必要なのだろうか?と思ったりもする。結婚していようが子どもがいようが大切なことって結局変わらず、健康とそれなりのお金と適切な人間関係さえあれば、人は生きていけるというのが私の持論だ。

あとはどれだけ自分の幸福を追求できるかの差で、まったく同じ幸せの形なんて存在せず、そうなってくるとロールモデルもいなくてもいいんじゃないか?と思う。まったく同じではなくても、自分と少しでも似ている部分や惹かれるところのある人を見つけて、いいところをちょっとずつ参考にしながら適切に関わっていければいいのではないだろうか。趣味や働き方に対する価値観がまったく同じ人に出会えないのと同じで、自分の理想の生き方をしている人もきっといないだろうから。

ついでに、同じ文脈で「私はずっと何もないまま生きていくんだろうか」という不安を抱えている方を見かけたりする。別にそれでいいんじゃないか?と思う。ダメなんだろうか、何もないままで生きていては。

たまたまインターネットで見かけただけなのでその人のパーソナルな情報は何も知らない。でも、肩書きや地位が何もなくても自分の力で生活を営んで生きている方は、必ず誰かの手本になると思う。気づけないだけで。

私たちの生き方は多様で自由で、だからこそ理想の姿も輪郭も不確かではあるけれど、きっとどこかで必ず誰かの背中を押せる存在になれるんじゃないだろうか。自分には何もないなんて嘘だ。何者かになれなくたって、生きていたっていいはず。先駆者のいない道を進むのは誰だって不安だろうけど、自分だけの生き方を見極めて迷いながらも幸せを追求していく姿は、誰かにとってのロールモデルのひとつになるかもしれないし。

Text/あたそ

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