普通でいなければいけない関係に興味が持てない

私の普通の女ではない部分は、個性であり自分のアイデンティティの一部だ。でも、開示できる人はごく一部で、不快に思われることも多々ある。だから、言えない。どんなことを思われても、仕事上の関係は続く。円滑に物事を進めるためにも、口をつぐむ。
上っ面だけでコミュニケーションを取り、その場しのぎで行われる会話に興味が持てない。天気の話とか仕事の話とか結婚の話とか恋愛の話とか、やっぱり私にはどうでもよくて、お互いに普通でいなければいけない空間で構築される人間関係にまったく興味が持てなくて、だから私は大きな団体のなかで、自分に似た人も気の合う人も見つけ出すことができないのだと思う。
我慢し続けて誰かといるくらいなら、意味の見いだせないつまらない会話をするくらいなら、ひとりでいたほうがいい。そういう気持ちもあって、ひとりでいることに慣れ切ってしまったというのも理由のひとつとしてあるのかもしれない。

本当は普通の人なんてどこにも存在しない。みんな普通の大人を演じ続けているだけで、出会う場所や環境が違えば、もしかしたらもっといろんな話ができていたのかもしれないのにね。Sさんも、もしかしたらそうなのかもしれない。お互いに普通の女じゃなくなって、いろんな話ができれば、似ているところ/違うところが見つかって、今よりもずっと近い距離で話ができていたのかもしれない。
でも、きっとそんな日は今後も来ない。私たちは職場で出会い、恐らくどちらかが辞めれば関係も終わる。私からランチに誘うことも、どうでもいい連絡をすることもきっとない。私のことを、普通の女だと認識している人に、私はどうも興味が持てない。

Text/あたそ