楽しかったあの頃を今も思い出している

でも、きっかけは思い出せないけれど、高校時代になんとなく疎遠になってしまって、それからはFacebookで近況を一方的に確認するだけになっている。なんとなく連絡が取れなくなってしまった。飲食店で働いていて、腕にかっこいいタトゥーを入れている。金髪もよく似合っているし、最近生まれた子どももすごくかわいらしい。とても幸せそうな姿を、画面越しで確認するのだった。

ねえ、私は今もまだ音楽が好きだよ。もっと大好きになったよ。こんなに好きなものに出会えたのは、絶対にあなたのおかげだと思う。長い人生のうち、こんなに何かに夢中になれたのは、あの頃あなたとたくさん音楽の話ができたからだ。好きなものや趣味について話せる人がいるって、こんなにも幸せなことだってわかったからだと思う。たまに音楽に関する文章を書いたりしているんだよ。あなたは知らないだろうけど。私よりもずっと音楽に詳しい友達もたくさんできたんだよ。それも全部あなたのおかげだって、私は今も思っているんだよ。
実際はどうなのかわからないけれど、あなたはもうすっかり音楽から遠ざかってしまったのかもしれない。昔の思い出とか、好きだったものになっているのかも。それでも、当時好きだった音楽を聴くたび、私はあなたのことを思い出しているんだよ。

彼女の投稿を見るたび、楽しかったあの頃を私は未だに思い出したりしている。

同じ熱量で好きでいたいだけなのに

彼女だけではない。音楽を通じて知り合った友達はあんなにたくさんいたはずなのに、気づいたら私だけになっている、ということが多々ある。私は、それが寂しい。ものすごく寂しい。
同じように大変な思いをしながら仕事をして、疲れた身体で家に帰って家事をして。ほかにもたくさんやらなければならないことがあって。結婚したり子どもがいたりすれば、自分のために使える体力もお金も時間も精神力もなくなる。だから、仕方ない。しょうがないことなんだってわかっている。

同じだけ熱量を持って音楽が好きだったはずなのに、気づいたら違う場所にいる。そういうことがよくある。私だけ、ずっと変わらないままで取り残された感覚になる。置き去りにされている。何かに対する熱量がずっと続くのは、いいことなのかもしれない。でも、私だけが単純に変われないだけなのかもしれない。

今年のフジロックにtoeが出るんだって。見られるんだろうか。他の好きなアーティストと被っていないといいけれど。ステージを見るたび、音楽を聴くたび、私はあなたのことを思い出すのだと思う。連絡をするきっかけはないけれど。でも、きっと私たちは何も変わっていない気もする。
私は、同じ熱量で音楽を好きでいつづけたい。ずっとそうだったらいいのに。どうして、みんな好きだったものを全然好きじゃなくなってしまうんだろう。変われない自分に罪悪感を抱くことなく、周りから取り残されている感覚にもならずに、昔の記憶を大切にしながらずっと夢中になっていたい。それだけだ。それだけなのに、どうしてこんなにも難しいんだろう。

Text/あたそ