年も明けていよいよ2024年になってしまった。三十路に入ると1年がよりあっという間に過ぎるとは聞いていたけれど、本当にそうだった。
年齢を重ねていくにつれて胃腸が弱くなり食べられる物と量が減ったが、欲望は衰えることを知らず増すばかり。毎日メルカリと服屋のインスタを欠かさずチェックしている始末だ。
私の住んでいる町には古着屋が多いこともあって、退屈なときは散歩がてらふらっと立ち寄ることがある。可愛い服を見つけると試着せずにはいられないし、お金に余裕があったら買ってしまうし、無くてもどうにかして買えないか電卓を叩く。こういう時間がもしかしたら一番楽しいかもしれない。
こないだ、そんなふうにして古着を散策していると男女ペアの外国人がやってきて、女性側がニコニコしながら姿見の前に立ち服を当てたり羽織ったりしていた。身長は170cmを余裕で超えており、誰がどうみてもモデルだろうといった見た目で似合わない服なんてないだろうなという感じ。もはや古着が古着に見えなかった。
おんなじようにして姿見の前に立ち服を当ててみると、そこには日本人形のようなずんぐりむっくりしたおかっぱ頭の子どもおばさんが立っていた。年齢不詳感のある、子どもおばさん。
「結局顔じゃん」
我に返って禁句のフレーズを心の中で私は呟いた。まあ正確には顔と体型だろう。
顔が良くてスタイルが良ければなんでも似合う。雑誌をひらけば一目瞭然だ。なんだったら雑誌では雑誌のイメージ柄、大人な甘めな服をいつも着ているあのモデルが、インスタに飛んでみれば全然真逆なメンズ物を私服で着こなしていたりする。なんでも似合うのかと衝撃を受ける瞬間だ。
気分転換に髪を切ったけど…
そういえばこないだ髪を切った。
ロングヘアを目指して絶賛伸ばし中の身なのだけど、伸びてやぼったくなってきたので整えてもらうついでに気分転換にワイドバングなボブにしてもらって、ついでにワインレッドに染めてもらった。髪だけ見るとオシャレだ。
家に帰ってインスタを開くと、カットモデルの女の子たちの写真が私のおすすめ欄にはよく出てくる。彼女たちはたいてい美人で……というか美人しかいなくて、どんなに奇抜な髪型ももれなく似合い映えている。
再び鏡の前に立つと、そこには少し赤みのあるこけし頭の女がいた。むくんで顔はパンパン、鼻はでかいしおまけに人中がやたら長くて上唇が極薄。一歩間違えればおじさんに見えなくもない。
「いや、髪型も結局顔なんかい」と突っ込まざるを得なかったし、美人でもないのに髪型にこだわったことが急に恥ずかしくなった。
美容院の鏡に映る自分はインスタでよく見る女の子たちと引けを取らない気がするくらい通常の1000倍可愛く見えたのに、家に帰る頃には魔法が解けて現実に戻ってしまう。美容院の鏡の前で常に生活をしたいと、こういうときばかりは本気で思う。
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