大人になって思うこと

いまとなれば、自宅にストリッパーがくることは母にとっても初めての経験だっただろうし、当時まだ三十代前半だった母としては、性的魅力をお金に換える職業についている人は、芸能人みたいな感じでよほどに綺麗だと思っていて、いったいどんな女性が来るのかと身構えていたものの、あまりにふつうだったので拍子抜けしたその思いをひとりで抱えきれず、かといって父親にも言えず、ついついわたしに漏らしたのではないかと思う。

しかし、それから30年以上たったいま、ストリッパーを現役でやっている友達も、引退していまは別の仕事についている友達もいるし、なんならわたしも一度ステージに立ったこともあるけれど、時折、母の「そういうお仕事してたわりにはそんなに綺麗でもないし、ふつうにおばさんだったわよね」という言葉を思い出すたびに、どんなことしていても、どんな過去があっても、別にあなたと同じ地平にいるただの女ですよと思う。しかし母ももう七十を超えているし実家の本棚にはずらりとフェミ本が並んでいる状況なので、今度実家に帰った際には、「昔、お父さんの仕事相手の奥さんで、元ストリッパーだって女の人がうちに来た事だったよね」と尋ねてみたら、どんな答えが返ってくるのか知りたい気がしている。

Text/大泉りか