「Living for Today」を一部だけ取り入れる

というような話をすると、だいたい「そうは言ってもここは日本だ!」と反論されてしまうし、また私自身もそう思う。もちろん、我々が明日からピダハンやタンザニアの人々のように暮らすことはできないが、しかし、一部分だけでもこの発想を取り入れてもいいのではないか。

たとえば、私は「今、別に不自由していないから」という理由で、結婚も出産も考えていない。これは、「40代になると途端に寂しくなるよ」と怒られることもある発想だ。でも、私に考えられるのはせいぜい5年先くらいまでのことで、10年、20年先のことなんてわからない。西アフリカの女性たちも、結婚や出産の予定を尋ねると、「それは未来が決めること」と答えるそうだ。そして、「そのときが来たら、受け入れるしかない」と考えるという。いつお腹をすかせた他人が表を歩いてくるかわからない。そのときが来たら、潔く諦めて、食べものを分け与えるしかない。

こういった時間軸の中で生きることを、多くの日本人が不安定だ、不安だと感じることは別におかしくないし、むしろ当然だ。ただ、不安定だ、不安だ、以外の感じ方もあることを、本書は教えてくれる。

いつか孤独に耐えきれなくなる日が、私にも来るかもしれない。しかし私はどちらかというと、それに対処すること自体を、ちょっと楽しみにしている。本書の言葉を借りれば、「Living for Today」な生き方は、「今、生きている」ということだけを根拠とした余裕と自信を、我々に与えてくれるのだ。

Text/チェコ好き(和田真里奈)