失敗と自省と改善の繰り返し。深く後悔するのは当然だよね

あなたがイメージしているように、わたしは怒りの反射神経がわりといいほうで、そのやり方が上手かどうかはさておき、その場で瞬時に「え? それっておかしくない?」「今のあなたの言動、とっても不快なんですけど」と言えるタイプの人間です。
おそらく、わたしとあなたはそもそもの戦い方が違うのだと思います。
ここで言う戦い方というのは、誰かを傷つける、言い負かすといった意味ではなく、自分を守るための術のことを指します。
この“自分を守るための術”は他者から軽んじられない・消費されないという側面もありますが、どういう振る舞いをすることが自分にとってストレスがないか、というのも含まれます。

わたしもいい大人なので、いついかなる時でも誰彼構わず面と向かって言いたいこと全てをぶつけているわけではなく、どうすることが自分にとって一番ストレスが少ないかを考えたうえで選択をしています。
言いたいことを飲み込んで自分の中でくすぶらせたまま過ごせばストレスになるからという理由で「嫌な気分になりました」と意思表示をするときもありますし、あまりにも言葉が通じない相手だと認識すればコミュニケーションに費やすエネルギーがもったいないからと何も言わずに飲み込むときもあります。また、褒められることではありませんが、そんなのお構いなしに溜飲を下げるためだけに怒りをぶつけるときだってあります。
「その場で上手に言えている」と評価していただいて恐縮ですが、現在も目下訓練中なのです。

時と場合によりますが、基本的にはわかりやすく意思表示をしたほうがメリットが大きく、ストレスも少ないと思って常に行動しています。
なまじ自分自身がはっきりと感情を言葉にできるタイプなものですから、少し前までは「言わないとつらいじゃん! ストレス溜まっちゃうでしょ!」と思っていたのですが……相手にはっきりと言うほうがストレスになる人もいるんだな、と。
あなたのように「はっきりと言うことで相手に嫌われたらどうしよう」と不安になるのもそうですし、相手を傷つけてしまうかもしれないと想像したり、その場の空気が悪くしまうのではという申し訳なさだったり……それらを体験するほうがずっとストレスだと感じる場合もあるでしょうね。

わたし自身、この性格で得をしているなと感じる場面は多々あります。
他人から舐められることはほとんどありませんし、自分を消費しようとする人や傷つけてくる人ともわかりやすく距離を取れています。また、そういったわたしの性格を長所だと捉えてくれる人たちが周りに多く、度が過ぎそうになったら注意もしてくれるので感謝もあります。

でもね、得をしている実感があるとはいえ、きちんと損をすることもありますし、数えきれないくらい失敗もしているのです。あなたが「こうやって言えばよかった」と後悔しているのとは逆で「あんなこと言うんじゃなかった」「言うべきタイミングではなかった」といった風に。
最近の記事でもお話しさせていただきましたが、人間関係は失敗と自省と改善の繰り返しですから、自分の行いを深く後悔するのは当然だよね、と受け止めています。
必ずしも、わたしの性格が正しくて優れている、あなたの性格が間違っていて損を被る、というわけではありません。わたしはあなたのように調和を重んじて周囲を見渡せる人にはなれませんから、憧れますし尊敬もしています。そのことを、知っておいてほしいと思います。

ただ、現状であなたが苦しい思いをする場面が多いのなら、「私のこの性格、もうちょっとこうしたいなー!」と思う気持ちもよくわかります。
これまでのあなたと180度違う性格、バチバチの瞬発力でバシッとズバッと言えるような人間になるのはなかなか難しいと思うので、今のあなたのまま、長所を残したまま苦しくならない方法を一緒に考えていけたらなと思います。

「怒っていいんだ」という気づき・理由を覚えておくこと

さて、あなたがその場で言いたいことを言えない理由として「すぐ鵜呑みにしてしまう」「すぐ頭が回らない」と挙げていますが、わたしにもその経験があります。
あまりにもひどい言葉、自分だったらそんなこと人に言わないし思ったことすらないような、自分の常識外のことを言われると驚きが先にきて不快感の理由に気づけなかったり、その場ではなんとなくモヤモヤする程度でも、あとから反芻することで「え? かなりひどいこと言われたな?!」と怒りが沸いてきたり。

ちなみにわたしはそういうときどうするかというと、自分の中で「これは怒っていいポイントなんだ」と覚えておくようにしています。
「あんなことを言われるなんて、自分は軽んじられる人間なんだ」「どうして言えなかったんだろう」と重たい感情を深く沈ませるのではなく、「次に同じことを言われたら、そのときちゃんと言おう」と決意して、どう返すかを考えたうえで意識だけ残す。
その場で言えなくても根に持ち続けるのではなく、「怒っていいんだ」という気づきを覚えておくこと、なんで嫌だったんだろうと理由を考えておくことはとても大切なので、その練習はしてみてもいいかもしれませんね。

また、あなたはその場で言えないことに対して、「そう思うならそのときに言ってよ、と言われたら何も言えません」とも仰っています。
たしかに、わたしが相手の立場なら、なんの脈絡もなしに「ほんとうはあのとき嫌な気持ちになったんだよね……」と言われると、たとえ自分に非があったとしても「え? 今!?」とびっくりしてしまうと思います。

ちなみにですが、わたしは昔の話を掘り返さないように心がけています。
人間誰しも失言はありますし、メンタルの状態が悪ければ他人への思いやりが疎かになってしまうときもあるでしょう。
もちろん、わたしだってそう。自分の発言に後悔したことはこれまで何度だってあり、周りの優しさに甘えて、許されてきたことは数えきれません。
特に親しい人、大事な人となれば、許す/許されるの関係が成り立ちます。
だからこそ、自分が傷つくような言葉を投げかけられたのが初めてだった場合は見逃すと言いますか……それに対して正論をぶつけようとは思いませんし、しないように気をつけています。もちろん、これに二度目があればきちんと言います。なぜなら、パートナーや仲のよい友達とこれからも楽しく過ごしたいから。

そのときは、「前にも同じことを言われて嫌な気持ちになったんだけど~」「ずっと前から気にしてたんだけど~」と過去の発言を引き合いに出すのではなく、「その言葉、嫌な気持ちになるよ」と今この瞬間の感情だけを出すようにしています。
もし「前に同じこと言ったときは何も言わなかったのに、普通に流して笑ってたじゃん」と言われたら、「ほんとうは前のときも嫌だったし、ずっと我慢したまま付き合ってた」と馬鹿正直に返すのではなく、「前のときはあなたがいろいろしんどそうだったからさ、タイミング悪いかな~と思ってあえて言わなかったんだよ。よくないメンタルのときって誰だってあるしさ」「あのときは聞き間違いかな? わたしが深刻に捉えすぎかな? と思ってあまり気に留めてなかったんだけど、また同じことを言われて嫌な気持ちになったんだよね!」など、上手な返し方はいくらでもありますから。

これらの返し方は、先に言ったような“意識を残す練習”が活きてくるのではないでしょうか。
相手に自分の気持ちを伝えるときは「申し訳ないんだけど……」とわざわざ下手に出る必要はなく、「あえて言わなかったんだよ」「やっぱり嫌だなって気づいたんだよ」と事実だけを淡々と述べることが重要だと思います。